秋田スギの家具、喜多俊之氏と地元職人がコラボ  そしてミラノへ

秋田スギ、さわやかな香りと美しい木目。昔の小学校の机や椅子には使われていたのだそうですが、最近はあまり見かけません。

その秋田スギを、イタリアと日本で活躍するプロダクトデザイナー喜多俊之氏の監修で、秋田の職人たちと製作した家具を、「AKITA COLLECTION」と銘打ち、ミラノHOMI(ホーミ)というライフスタイルの見本市に押しかけた秋田人たちがいます。

秋田県内11社の家具製造者たちと案内役の柿崎公明さんです。

柿崎さんは秋田市出身。60歳で秋田に戻り、秋田の自然資源を産業資源として洗練された形で世界に知ってもらいたいという思いで、このプロジェクトを立ち上げました。

スギは、家具にするには少し木質が柔らかく傷つきやすい。しかし、色と香りは魅力的です。幹の中心に近い所は赤味を帯び、外側は白っぽい。その赤身が特に秋田スギらしいのだそうです。ミラノの展示会でAKITA COLLECTIONのブースにいらした方に、何にひかれて立ち寄ってくれたのかを尋ねたら、「色」と答えた方が多かったそうです。

ミラノHOMIに展示されたAKITA COLLECTION

日本のスギは学名を「Cryptomeria japonica」といいます。有名なゴッホの「糸杉」という絵がありますが、これは 「Cupressus」で、日本のスギとはかなり違うのです。こうした色合いの木材は少ないのかもしれません。

日本薬科大学客員教授・千葉良子先生は秋田スギの香りや色は、人の心,体をリラックスさせ「癒し」をもたらすことが数々の研究から明らかになっている、と話しています。

秋田スギの赤と白と木目を組み合わせた美しい幾何学模様の板。それを職人たちがテーブル、椅子、タンスなどに作り上げました。この小さなスツールやテーブルからもその特徴がよく分かります。幾何学模様、場所によっては、ほぞを掘り、はめ込んでいるのです。作業風景をビデオに収めたものを見せていただきましたが、いくつもの作業を調整しながら少しずつ進めなくてはならない難しい作業です。そうしたディティールに職人の技術が生きています。

秋田スギの幹の中心は赤く周囲は白い

次にご紹介する「Aチェア」は、正面から見ると背もたれと脚が、そしてサイドから見るとひじ掛けと脚がAKITAのAになっているのが自慢。また、板の厚さが絶妙で、腰掛けたときのフィット感や体重を掛けたときの跳ね返りがとても優しいのです。

この椅子が気に入ったイタリアの有名なフードデザイナーは、椅子を借り出して彼女のアレンジした素敵な空間に置いて撮影し、その記事を送ってくださったそうです。

AIKAWA Stacking Chair

 

ODATE Dining Table

 下のTVキャビネットの引き出しを見てください。写真ではよく分からないかもしれませんが、引き出しを閉めるときのピタっとした感覚にちょっと感動を覚えます。

TV Cabinet

2017年の1月に初めてミラノの展示会に行った時、秋田スギの色を「ファミリーウォーム(家族の温かさ)」と表現した人がいたそうです。

柿崎さんは、秋田スギの椅子に腰かけたときに、多くの人の中で何かが変わるのではないかと思うそうです。

「豊かな人生が見えるものを秋田から世界に発信したい」

そういう思いがAKITA COLLECTIONには込められています。

 (2018年3月9日)

▼文:竹内カンナ

秋田市出身。WE LOVE AKITA 記者。米経済通信社で長年、日本の金融経済のニュースを幅広く担当したあと、現在は 米経済紙の日本語版の翻訳のかたわら、秋田の活性化について考え続けています。