プラスチック成形の東邦工業、現場の声を大切に

小坂町南部の工業団地に立つ東邦工業。プラスチック成形に使われる金型の設計・製作、プラスチックの射出成形、成形品への塗装・印刷・超音波加工といった一貫した工程をワンストップで行っている会社です。

社長は二宮裕人さん、バックオフィスを一任されているのが二宮早百合さん。ご夫婦です。

二宮裕人社長と奥様の二宮早百合さん

始業時間のちょっと前にうかがったら、玄関先を何人かの方たちが掃いています。声を掛けたら顔を上げて笑顔で答えてくださったのが早百合さんでした。

会社の現状

東邦工業は二宮社長のお父さんが経営する東京の会社でしたが、1988年に十和田オーディオの仕事をするために小坂町に工場を移しました。その後もずっと本社は東京でしたが、代替わりとともに今、小坂町に本社を移す作業を進め始めたそうです。

現在、従業員は36名。年齢的には30歳前の若い人と45~55歳が多く、平均年齢は43歳です。出来た製品の検査の作業が多いため、他の製造業者に比べ女性の比率が高く男女がほぼ半数ずつだそうです。

ただ、射出成形機など大型の機械を使うところには男性が多いとのこと。

最新の射出成形機

事業の拡大

2年前に国の「ものづくり補助金」などを活用して最新鋭の成形機を購入しました。十和田オーディオの海外進出などもあって、主要取引先を広げ、最近では 八重洲無線、サンミナSCIシステムズ・ジャパンなどの仕事が増えています。

八重洲無線は、無線機の大手メーカーで、米モトローラの製品も扱っています。無線機って最近、携帯電話もあるし、使われているのかな?と思いましたが、飲食店などで従業員がイヤフォンをして腰に小さな機械をつけていたりしますね、けっこう業務用で広く使われていて、そういう機器のプラスチック部分も作っているそうです。

トランシーバーの部品

今後の計画

東邦工業は、日本全体が人手不足になる中、秋田で採用が難しくなるのは避けられないと考え、自動化機械を導入し、人数が減ってもこれまで以上の仕事をこなせるようにしていこうと考えています。また、5カ年計画には、継ぎ足しながら拡大してきた社屋の建て替えも盛り込んでいるそうです。

二宮社長

昔は2次元で図面を書いていましたが、今は3D CADを使って作った3Dのモデリングがポンと届き、これを作ってよ、という時代(二宮社長)

求める人材と研修の強化

就職時に必要な資格は特になく、入社してから、長野県の日精樹脂工業が開設している「日精スクール」など機械メーカーが行う研修や玉掛け技能講習、クレーン運転業務特別教育などに参加してもらうそうです。

3D CADの時代には、ゲームとかやってきた人が合っているのではないかと思います」(二宮社長)

プラスチック成形は、金型の温度や圧力の掛け方、プラスチック材の種類によって全く違ったものができます。これまでのオペレーターはこの職人技を見よう見まねで習得してきましたが、今の若手の人たちには基本的なところは研修で学んでもらい、その上で熟練オペレーターからノウハウを教えてもらうことにより会社全体のレベルアップを図り、作業負担の軽減・生産性の向上につなげたいと思っているそうです。

分からないことを知る努力にとどまらず、自分の頭で考え、疑問をもったり、問題に気づいたり、それをどう解決するかを考えることができるようになってほしいと願っているとのことでした。

渡部みのりWLA編集長

早百合さんは、ある若手が、入社して間もないのに、機械から出てきた製品を見て問題点に気づき、それを自分なりに考えて修正している姿を見て、「ああ、この子はこんなことにも気づくんだな」と、頼もしく思ったそうです。ちょうど同じ世代のお子さんがいることもあり、若手を我が子のように感じているようでした。

勤続年数は長い

採用は毎年定期的にということではなく、定年で減った人数を補充するという形で採用しているそうです。「有給休暇も平均14日ぐらい取っています。入社してくる人は皆さん、長く勤めてくれています」(早百合さん)

勤続年数が長い理由について、二宮社長は、「自主性に任せるようにしていることがいいのかなと思います。最終的には私が決めるのですが、できるだけ相談しながら進めるようにしています。そうすると、私が気づかないところまでやってくれていたり」と、答えられました。現場の声を大切にする経営スタイルのようです。

勤務時間は個々の事情を考慮

また、勤務時間は各自の都合に合わせ柔軟に対応しておられるそうです。基本となる勤務時間は7.5時間ですが、5時間の人も3人いるそうです。プラスチック成形の機械は24時間動いているので、深夜勤務もあります

初任給は、高卒で15万円。皆勤手当が1万円、交代勤務に入ってもらうと1万5000円。深夜勤務手当は1万円。家族手当は、配偶者5000円、第1子3000円、第2子2000円と手厚い。

二宮社長は、先代が指揮を執っている間は営業で仕事を取ってくることと現場のことだけに専念してきましたが、数年前に社長職を譲り受け、早百合さんと二人三脚で徐々に経営全般に携わるようになったそうです。そのためか、まだ、設立したばかりの会社ような初々しさがただよっています。

小坂町の地縁を大切に

尊敬する経営者をお聞きすると、「やはり、十和田オーディオの伊藤 忠夫名誉会長でしょうか」と、同社が小坂町に進出するきっかけになった会社の創業者を挙げられました。もう一人は、隣り合わせの敷地にあるカミテの上手康弘社長。カミテがプレス金型設計製作で、東邦工業がプラスチック成形なので協業がしやすい業種であることもあり、一つのプロジェクトに一緒に取り組むなど良い関係を築いているようでした。

カミテの上手康弘社長(東邦工業に続き取材させていただきました)

取材を終えて:

にこやかな二宮社長と情熱的な早百合さんの夫婦のコンビネーションの良さがとても印象的でした。二人が従業員の一人ひとりの自主性を大切に、人柄をよく見ながら接しているのを感じました。

◆東邦工業の詳細情報はこちら

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取材・文・写真:竹内カンナ・渡部みのり