東京のおしゃれなビルのオーダー家具を製作 松井木工

松井靖社長

「既製品を作るのと違い一つ一つ違うものを作るので飽きないと思います(松井社長)

松井木工は、湯沢市にあるオーダー家具専門の木工所です。従業員は12人とこじんまりしていますが、東京の超一流ホテルやミッドタウン、ヒルズといった大手不動産会社の複合ビルにも製品を納めています。羽田空港の日本航空のサクララウンジの家具も同社の製品だそう。

受注の多くは東京から

松井靖社長は、若かりしとき東京で修業しました。いくつもの下請けの木工所を抱えてオーダー家具を製作している会社でした。松井木工が東京から仕事を受けられる一つの理由です。また、東京での営業経験のある社員が営業を統括していることがもう一つの理由です。

多くの人の目に触れる家具を作っているので、それを見た人から仕事ぶりを評価されて、新たな注文が入るという形で顧客が広がってきました。

「ここ数年は、どんどん仕事が増えてきたので、人を増やそうと思っています」(松井社長)

①職人、②設計技師、③営業の3人を募集しています。家具の設計は、専門に教えている学校もなければ資格もありません。CADを使って入社してからオン・ザ・ジョブで覚えてもらうことになるそうです。現在、同社の家具を設計している技師は秋田木工出身で、同社の仕事が増え続けている理由の一つは、この技師の図面が素晴らしいためだそうです。東京のデザイナーのデッサンを見て、構造的に無理だとか、こんな金具はありませんが、このメーカーのこれなら使えますよと言えてしまうのも設計技師の経験や実力があるからこそ。そんな師匠に教えてもらえるなんてラッキーじゃないでしょうか!

設計は在宅勤務でも可能だそうです。秋田在住である必要もなく、図面1枚ごとの請負いという形でもいいそうです。また希望があれば時短勤務やパートタイムなどの柔軟な働き方でもいいそうです。ただし、建築の設計ができるからといって家具の設計ができるわけではなく、家具の設計技師は東北中を探しても片手で数えるぐらいしかいないそうです。 

松井木工が作るのは誰も作ったことのないものばかり。デザイナーの描いた図面は、かっこいいけれど、そのまま作っては耐久性に欠けるものもあるので、製作は発注元と相談しながら進めていかなければなりません。顧客の頭の中にあるものがすべて図面に表れているわけでもありませんから図面通りに作っても顧客が求めているものができるわけではありません。顧客の考えていることを推察し、確認するという作業が重要です。

 図面を形にしていく作業は技術力以上にコミュニケーションが重要(松井社長)

徒弟制度の時代ではない 

小さな木工所というと徒弟制度で、厳しく仕込まれるのではないかという気がしますが、今のベテラン職人は若い人が「変なことをやっているな」と思ってもすぐに怒ったりはしないそうです。技術もどんどん変わっていくし、もしかすると、そこから何か新しいものが生まれるかもしれないからです。若い人がやっていることが、うまくいかなくなると、「こういうことなんじゃないの」といって手を貸すそうです。 

松井木工での家具の製作は一人がいろんな工程を任されるので、自分が作っているという実感を持つことができ、製品が完成していく楽しみを味わうことができます。

 松井社長は、若手社員が自分で道具を買いたいと言い出したことをとても嬉しく思っているようでした。道具は基本的に会社が備え付けていますが、職人の魂とも言える道具にこだわりを持つということは職人としてのやる気の表れです。松井社長は、彼が難しい仕事や、やったことのない仕事にチャレンジしようとする姿勢に頼もしさを感じているようでした。 

待遇

 小さな会社ですが、社会保険や厚生年金だけでなく、企業年金制度もあるそうです。しかし、残業がないわけではありません。受注はけっこう重なることが多く、そういう時は、協力企業に委託したりするそうです。また、時には会社を午前4時に出てトラックで東京など納品先に出かけるなどということもあるそうです。 

 「よさこい」で町おこし

松井社長、町おこしも頑張っています。躍動感にあふれています!その元気の秘密は、27年前から続けている「よさこい」にあるのかもしれません。同級生が札幌でよさこいを見てきて「面白かった!湯沢でもやりたい!」といいだしたことから始まったそうです。 

松井社長(右端)とよさこいの仲間たち

地元の祭りは「静」の祭りが多かったこともあり、威勢のいいよさこいにひかれ、その後、秋田大学の学生たちが中心になって「ヤートセ 秋田」を始めるなど一大ブームになり、一時は大学生や子供たちも含め120人ぐらい集まった時代もあったそうです。

 最初は、よさこいには欠かせない長ばんてんも「なんと夏に丹前を着て~」と呆れられたそうです。最近は、踊り好きな人たちがヒップホップなどに行ってしまったり、そもそも地元に若い人が少なくなってしまったのでメンバーも減ってしまいました。それでも、今もいろんな催しに呼ばれては踊り、東北各地の仲間たちとの付き合いが続いているそうです。 

取材を終えて:

「祭りが好きというより人が集まるのが好き」と松井社長。湯沢にもっと若い人が増えてにぎやかにならないかなと思っておられるようです。松井木工を支えているのも60歳前後の世代。ぜひ若い世代がもっと入社して東京でも指折りのおしゃれな空間を彩る家具の製作を受注できる営業力と顧客の信頼の高い技術力を承継していって欲しいと思いました。

◆松井木工のホームページはこちら

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取材・文・写真:竹内カンナ・渡部みのり