エレクトロニクスのマザー工場、海外とも連携 東北フジクラ

東北フジクラは、フジクラの子会社です。フジクラといえば日本の電線業界の御三家の一角。電線のほか光ファイバーケーブルなどさまざまな製品を製造している上場企業です。しかし、東北フジクラの工場見学に来た高校生に同社を知ってるかと聞いてみると「ほとんど知らないんですよね・・・」と佐藤光晴管理部次長は少し寂しそう。

実はWE LOVE AKITAの渡部みのり編集長も取材前、「東北クジラ」、「東北クジラ」と言っているので、パっと見るとそう見えなくもないし、面白がっているのだと思っていたら、ほんとにそういう社名だと思っていたそうです。(笑)  錯覚っていうんでしょうか、そういうことありますよね。私も以前、看板に「おこと教授」と書いてあるのを「おとこ教授」と読んで、何を教えるんだろうと思ったことがありました。それはともかく、フジクラは日本の製造業を牽引する大企業ですから知っておきましょう!

それに、東北フジクラは秋田県人が大切にすべき会社です。なにせ「フジクラの多角化戦略の一翼を担い、エレクトロニクス分野の重要拠点として設置された」のですから。1989年に秋田新都市(御所野)へ製造業として最初に入居して約30年になります。

主な製品は「フレキシブルプリント配線板(FPC)」と「センサ」です。

FPC、スマートフォン、パソコン、デジカメなどに広く採用されています。フジクラグループのFPCの国内製造拠点は東北フジクラのみですが、主力製造拠点はタイやベトナム、中国にあります。

フレキシブルプリント基板(FPC)

センサは2種類で、主に医療用に用いられるセラミック酸素センサ(酸素濃度測定モジュール)」と、工場などの空圧機器向けのほか血圧計やお風呂の水位調節など空気圧、水圧などの変化を測る「圧力センサ」を作っています。

酸素センサ

圧力センサ

取材にうかがうと、佐藤次長が入社2,3年の高卒女子と大卒男子を待機させてくださっており、入社の動機や仕事のやりがいについて詳しくお聞きすることができました。

高卒女子の入社のきっかけや仕事について

入社3年目で酸素センサモジュールの調整をしている永坂 梢(えいさか こずえ)さんは秋田工業高校の機械科出身で「機械がカッコいい!、機械を使う仕事をしたい!」と思っていました。機械科の先生に相談したところ、東北フジクラを勧められ、見学に来たら大きな機械がたくさんあったので、「ここだ!」と思ったそうです。

永坂さん

ただ、今の仕事はそうした大きな機械を操作する仕事ではなく、酸素センサが正常値を示すように調整する仕事。酸素センサは電流で酸素を測るのですが、調整はけっこう手作業。毎日、同じような作業の繰り返しのようにも思えますが、ときどき、「あ、こんなことができるようになったんだ。すごいじゃない!」と、ひそかに自分の成長を感じているそうです。

そんな仕事ぶりが認められて、この春からは新しい仕事にチャレンジすることになりました!

酸素センサは、セラミックの特殊な特徴を生かして 空気中の酸素濃度を電流に変換するセンサ。特定の製品では、その出力を厳密に一定の性能に おさめるために1個ずつ調整しています

東北フジクラは、しばらく正社員を採用しない時期がありました。数年前から採用を再開、今回の取材に応じてくださった皆さんが入社しました。佐藤次長が製造部門から管理部に異動して初めての新入社員なので、ことさら若い彼らを気にかけているようす。若手の方もけっこう年上の先輩なはずなのですが、佐藤次長と話すとき、目線がフラットだなあと思いました。

金田 桃佳(かねた ももか)さん

金田桃佳さんは、昨夏に高校野球で大いに盛り上がった金足農業高校の生物資源科の出身ですが、やはりものづくりをやりたかったのだそうです。今の仕事は圧力センサのチップの検査の仕事なので、自分で作るというわけではありませんが、永坂さんと同様、新入社員に教えたりするときに自分の成長を感じ、この仕事でよかったと思っているそうです。成長が感じられることは仕事を長く続けるには欠かせない要素ですね。今では後輩の教育も任されるほど上司からも信頼されているそうです。

圧力センサは、半導体チップで作られています。ただの半導体ではなく、特殊な微細加工を施していてそこに微小な異物があっても不良となります。そのために顕微鏡で全数検査を行っています

三浦菜々子(ななこ)さん

新屋高校文系コースを卒業した三浦菜々子さんは、FPCを作るときに使う薬品が正常値かどうかを調べる仕事をしていましたが、最近では勤怠データの入力管理といった事務処理の仕事を始めました。もともと手仕事が好きで伝統工芸の世界に入りたいと思っていたそうです。東北フジクラは先端的な技術の会社で本来やりたかったこととはずいぶん違うような気がしますが、一つのことに集中できる仕事なので自分に合っていると思っているそうです。

FPCの製造にはメッキ工程があります。メッキには、いろいろな薬液が使用されていてそれらを、適正な濃度に保つ必要があります。メッキ液の分析は、日々各メッキラインごとにそれらの濃度を分析して適正な濃度を保つ必要があります

相場円花(まどか)さん

秋田和洋女子高校ビジネスコース出身の相場円花さんは、お父さんが製造業に携わっていたので自然に製造業の仕事につきたいと思うようになり就職課で東北フジクラを勧められました。入社2年目でFPCの製造を担当していますが、午前中は職場内の仕事の段取りをするなどまとめ役のようなこともしているそうです。若い人たちがどんどん仕事を任される職場なようです。

技術系大卒・高専卒社員の入社動機と仕事について

さて男子3人は、岩村俊哉さんと福田優介さんが秋田県立大学出身、佐藤隼さんが秋田高専の出身。皆さん入社3年目です。

左から佐藤隼(しゅん)さん、福田優介さん、岩村俊哉(としや)さん

佐藤さんは、秋田高専で半導体を勉強していたので専門を生かせる東北フジクラを紹介されました。趣味の釣りやスノーボードにも行きやすいので秋田の会社に勤めようと思っていたそうです。佐藤さんは圧力センサの製造の自動化を進めるような仕事をしていて、自分で装置を組み上げるなど若いのにすごいらしい。最近、ベトナムの関連会社まで出張し、装置の立ち上げも経験したそうです。それらの自動化装置には、機械系や電気系、ソフトのプログラムなど幅広い知識が必要なので常に学び続けていかなければならないそうです。

佐藤次長

これからますます自動化やIT化が進むなか、幅広い最先端の知識を常に吸収し続けていくことが求められるそうです。

岩村さんと福田さんは、FPCを生産するための技術的な仕事を担当しています。岩村さんは、たとえば、「試作品を作るプロセスに問題がないか、もし問題があれば条件を変えながら周りの人と相談しながら問題を解決する」といった能力が求められていると語ります。

岩村さんは、担当の製品が決まっていて、その製品の全体に責任を持ちます。一方、福田さんは、たくさんある製造工程のプロフェッショナルとしてその工程に流れる全製品に対して責任を持っています。いわば、岩村さんは製品担当で、福田さんは工程担当ということになります。両方の担当が協力し合ってこそ、よい仕事ができるのだそうです。

岩村さんは、人混みが苦手で、毎日、満員電車に揺られて通勤することなど考えられなかったそうです。実家は東北フジクラから1時間ぐらいですが、今は会社から車で10分ほどのところに住んでいるそうです。

福田さんは、栃木県出身ですが大学入学のため秋田に来て、卒業のときも、秋田が気に入り関東に帰る必要性も感じなかったので、そのまま秋田で就職を決めたとのこと。スマートフォンやカメラのような最新のデバイスが大好きだったので、そうした製品に関われるというのが魅力だったそうです。

「入社してみて、こんなによく使われている製品に入っている部品を作ってるんだ!と驚きました」(福田さん)

タイの拠点の役割

フジクラグループには、同じFPCを作っている拠点としてタイに従業員1万人規模の関連会社があります。

秋田では、難易度の高い製品や試作品の生産を行っていて、携帯電話関連など非常に数量の多いFPC製品は主にタイで生産しています(佐藤次長)

国内でFPCをつくっているのは秋田だけなので本社の人も製造研修で秋田に来たりします。また秋田にも設計部門があり、タイの工場との人材交流もあります。現場の若い人がタイの現場に指導に行くことも多くなっているそうです。身振り手振りに最近はスマホの翻訳アプリを使ってけっこうコミュニケーションできているそうです。

待遇

直接雇用されている人が450人、派遣社員は200人以上いるそうです。製品部門別では、ざっくりとセンサが150人、FPCが450人。その他、間接部門や出向者など合わせて680人ほどが働いています。

福利厚生は「たぶん秋田県ではかなり良い」(佐藤次長)。子育て期の時短勤務も子供が小学校3年生になるまで取れます。育児休暇を取った後も元の職場に戻られるそうです。忙しい時期でも土日には休みが取りやすく、有給休暇も申請通り取れ、年平均13日以上取得しているそうです。

家族と一緒にバーベキューパーティ

平均年齢は44歳。ただ、採用を控えていたことから20歳代後半から30歳代にかけての人が少なく、若い人が入るとすぐ仕事を任せてもらえます!やる気のある人集まれ!

取材を終えて:

若い女子が現場でけっこう働いています。一見単調な作業に見えますが、けっしてそうではなく経験を積むにつれて自分の成長が感じられる仕事なのだそう。それに静かな職場でおしゃべりもしないのだろうなと思っていましたが、実はけっこういろんな話をしながら和気あいあいらしいです。

暑気払いにもバナーが! 気合入っています!

男子たちは活動的でプライベートな生活を楽しんでいるようすがうかがえました。秋田駅まで15kmぐらいあるので、飲み会のときは気合いを入れて出て行く!という感じになるらしいですが、そばに巨大なイオンモールもあるので生活に必要なものは近くでそろいます。

◆東北フジクラ HP:http://www.tf.fujikura.jp/index.html

◆6年ほど前に制作されたビデオですが、製品についてとてもよくわかりやすく説明されているので掲載させていただきます。

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