「ギバサ」が消えた!

「ギバサ」が、どこに行っても品切れなのです。有楽町交通会館の県産品ショップ「秋田ふるさと館」に行ったら、レジのところに「ギバサの次回入荷見通しは立っていません」と書いてあります。秋田県物産振興会のネットショップでも「品切れ扱いで受注をストップしています」とあります。

どうしちゃったんでしょうか?病気で全滅してしまったのでしょうか、それとも製造業者さんが高齢化で店じまいしてしまったんでしょうか・・・、秋田ではありえないことではない、と心配になり、男鹿半島の三高水産さんに電話してみました。

あ、その前に「ギバサ」を知らない人もいるかもしれないので、ちょっと説明しておきます。しかし、調べれば調べるほどにわけが分からなくなってきたので、誤解を恐れずばっさりと言い切らせていただきます。「ギバサは日本全国で広く『アカモク』と呼ばれている海藻です」。ああ、言ってしまった・・・。このギバサという日本語っぽくない神秘的な言葉の響きがギバサ人気の理由の一つだと思ってるのですが、こう言ってしまっては元も子もないですね。(笑)

どんなものか、ちょっと三高水産さんのホームページから写真をお借りしました。

見た感じちょっとモズクにも似ていますが、味はメカブに近いです。

アカモクはホンダワラの仲間で、以前から健康食品として人気なんですが、数年前からは「スーパーフード」の仲間にも入れてもらっています。なにせ低カロリーです。フコイダンやアルギン酸という健康にいい成分がたくさん含まれ、ワカメやコンブよりカルシウム、鉄、カリウムも多い。コルステロールや血糖値を上げるとか、腸内環境の改善(簡単にいうとお通じがよくなる)ということで、年中食べている人が多い上、春は抗アレルギー効果があるとしてさらに人気が高くなるそうです。

海の納豆とも言われ、わたしは針ショウガをちょちょっとのせてめんつゆやポン酢と一緒にいただくのが好きですし、味噌汁に大根やネギと一緒に入れてもいいし、とにかく好きな人は毎日食べているものなんです。

そのギバサが店から消えた!

これは大変なことです。三高水産に電話をしたところ、すぐに明るい声の女性が受話器を取ってくださいました。

WE LOVE AKITA 「東京でギバサが品切れなんですが、どうしてかご存知ですか?」

女性(その後、社長夫人の夏井るり子さんと判明)「所さんのテレビです」

はあ、そーだったんです。テレビで紹介されたのでバカ売れして品切れになってしまったのだそうです。9月17日、日曜の午後5時という時間帯にTBS系列でやっている「所さん 『お届けモノです!』」という番組に、秋田出身タレント佐々木希さんの旦那さん、アンジャッシュ渡部建さんが、いつもうちの冷蔵庫に入っていますと言って三高水産のギバサをスタジオに持ってきたのだそうです。

この後、三高水産の電話はじゃんじゃん鳴り続け、通販用に、予め6万個(!)の商品を用意していたにもかかわらず3時間で売り切れ、4万個を追加したそうです。

まあ、これですめば嬉しい悲鳴というところですが、そのあと9月26日に、こんどは朝日放送系列の「たけしの家庭の医学」で内臓脂肪を減らす食品としてギバサが取り上げられたそうなんです。このときのロケは岩手だったので、大きな影響はないと思っていたのだそうですが、それでも注文が急増。とうとう通販への掲載はストップし、扱っていただいていたお店には、当分出荷できないというお知らせを出すことになってしまいました。

三高水産の夏井勝博社長によると、それ以降、土日も休まず、従業員10人総出で1日2500個ずつ作り続けているそうです。これからも当分はそうした状態が続くそうです。必死で働いている最中も電話が鳴り続け、明るい声で電話に出てくださった奥さんのるみ子さんは一時、体調を崩してしまうし、電話を受けていたのでは仕事にならないので、しばらく電話を取らない時期もあったそうです。

今、インタネットで「ギバサ」とキーワードを入力して検索すると、たくさんの通販サイトが引っかかるのですが、それを開いてもアカモクの商品が出てくるだけです。ギバサとアカモクが(ほぼ)同じものだと知らない人はきっと戸惑うでしょうね。「男鹿のんめえもん(うまいもの)」のサイトの三高水産のぎばさは、【ご予約受付/納期未定】になっています。

夏井社長は、「皆さんにはご迷惑をおかけして申し訳ありません。精一杯頑張ってますので、待っててください」とおっしゃっていました。是非食べてみたいという皆様、しばらくはアカモクを食べていてください。でも、秋田のギバサの生産が追い付いてきたら、またよろしくお願いいたします。12月10日ぐらいには出荷できる見通しだそうです。

(2017年10月29日)

▼文:竹内カンナ

秋田市出身。WE LOVE AKITA 記者。米経済通信社で長年、日本の金融経済のニュースを幅広く担当したあと、現在は 米経済紙の日本語版の翻訳のかたわら、秋田の活性化について考え続けています。