秋田に住んでいたころ、雪解けとともに秋田の人たちがそわそわし始めるのを感じていました。山菜を採りに行く話や山菜を食べた話や、だれそれが採ってきたのでおすそ分けします、といった話題があちこちで飛び交います。
わたしは子供の頃、わらびが大好きで、毎年わらびの季節になると茹でておひたしにしてもらうのを楽しみにしていました。重曹や米ぬかであく取りをしなければいけないのでちょっと面倒なんですが、大きな束をきっちりと切って小鉢に山のように積んだのをたっぷりのかつお節とおしょうゆで、もりもり食べていました。
この季節には、よく農家のおかあさんたちが採った山菜を売って歩く姿もみられました。
でも東京ではあまり売ってないし、自分で料理したこともなかったので、ほとんど食べることもありませんでした。でも最近、秋田に帰ったり、秋田の人と会う機会が増え、春になると秋田の人たちの間にただよっていたそわそわ感を思い出しました。秋田の、それも山の方に行くと、山菜こそが春の使者です。
毎年、最初に芽を出すのがふきのとう。3月下旬から4月半ばが旬。そのあと4月後半からたらのめ、こしあぶらなどが、こごみが出てきて、もう少しするとあいこ、しどけ、みやまいらくさ、やまうどなどが一斉に出てきます。雪の下で身を縮めていた植物たちが一斉に目を覚まし、背筋を伸ばすように。
今年は豪雪だったので、山菜の成長はどうだろうと思い、小坂町で山菜の通販をされている山菜ガールこと田中奈津子さんにお電話で取材してみました。「あれ?」って思った方もいらっしゃるのではないでしょうか。「田中さんだったっけ?」
なにせ山菜ガールは有名人。3年前に起業され、山菜の宅配便という秋田らしいビジネスモデルでグッドライフアワードという環境大臣賞の最優秀賞を取ったりしたのでメディアなどにも取り上げられていました。でも田中さんじゃなかったはず・・・。ですよね! わたしもあれ?っと思ったのでお聞きしてみたら、なんと1週間前にご結婚されて田中さんになられたばかりだったのだそうです。「おめでとうございます!」
ご自身もまだ、どちらの名前で仕事をしようか迷われているようで、お電話には「栗山です!」といって出てこられました。(笑) わたしもどうお呼びしていいか悩みますが、もう「あきた森の宅配便」のホームページも田中さんになっているし、田中さんとお呼びしま~す。
田中さんによると、今年の山菜の生育は、雪の影響はなく平年並みだそうです。でも雪が多い年は雪解け水でさらにおいしくなるそうです。
小坂町など県北はゴールデンウィークが山菜採りのピーク。田中さんの会社は店長とアルバイトさんの2人。で忙しい間は近所のおかあさんたちにも手伝ってもらうそうです。
田中さんの会社に山菜を売ってくれる「山の名人」は現在35人ぐらいだそうです。HPでひとりひとり写真入りで紹介しています。ほ~、女性が圧倒的に多い!
「山の名人」たちはだいたい朝、山菜を採りに行くそうです。採った山菜は田中さんの事務所まで持ってきてもらって、午後にはよくチェックして洗えるものは洗い、いろんな注意書き(山のものなので虫も一緒に入っていたりしますとか)を入れて箱詰めして、午後4時ぐらいに宅配便の人に集荷に来てもらって、冷蔵便で送るのだそうです。
ほらほら、そこのあなた、今から注文してみようなどと考えていませんか?
「甘~い!」(笑)
田中さんによると、たらのめなど人気商品は山の宅配便が2月に受注を開始すると1週間ぐらいで予約がいっぱいになってしまうそうです。そう、天然の山菜は、需要に応じて生産量を増やすわけにはいかないのですよ。
でもがっかりしないでください。根まがりだけやわらび、みずなどはまだ大丈夫だそうです。(詳しくはホームページでご確認ください!)生の根まがりだけはやはり香りも歯ごたえも最高です。わたしはお味噌汁が好きでした。
山菜で面倒なのはあく抜き。東京・恵比寿にある秋田の日本酒をフランス料理で飲ませる「秋田純米酒処」でフレンチのシェフをされている末長直健さんが、秋田の山菜はあくが強いのですが、あくを抜きすぎると風味がなくなってしまうので、ちょうどいいあくぬき度合いを探るのに苦労したそうです。
でも天ぷらにはあく抜きが必要ありません。ふきのとうもたらのめもそのままでOK! ちょっぴり楽な上、さわやかな香りと苦みを味わうのに天ぷらは最高の料理方法です。ああ、食べた~い!
■ 森の宅配便のホームページ http://akita-mori.com/
■ フェイスブック https://www.facebook.com/akitamori.takuhaibin
▼文:竹内カンナ