「稼げる農業」で地域課題解決に取り組む 羽後町そば研

700年前に始まったといわれる伝統ある「西馬音内(にしもない)の盆踊り」で有名な秋田県羽後町は、「西馬音内そば」でも知られています。有名なのは盆踊り会場のすぐそば、二万石橋のたもとにある「弥助そばや」。海藻の「ふのり」を使ったそばを浅いどんぶりに入れ、たっぷりのネギとあっさり味の冷たい汁をかけて食べるのが基本スタイル。つるっとしてコシのある麺でのど越しが最高です。

そんなまちで、美味しいソバを生産している小さな会社があるんです。

その会社の名前は「株式会社 そば研

代表取締役の猪岡專一さんは、1997年頃から羽後町で米から「ソバ」への転作を始め、軌道に乗ったところで自宅を改装し百姓そば屋「彦三」を開業。現在では県外のお蕎麦屋さんにもそば粉を提供するようになりました。

最初は小規模でしたが、現在では合計320ヘクタールもの農地600人以上の生産農家でソバを栽培し、工房で加工・販売をしています。

そば研は「農地を守る・里山を守る・農地を次世代に残す」という会社理念のもと、日々、ソバ生産に励んでいます。

こうした経営により、平成29年度には「ふるさと秋田農林水産大賞(農産漁村活性化部門)」を受賞しました。

稼げる農業を目指して

あらゆる農作物は、種をまいて収穫・出荷するまで利益は発生しません。そして、収穫するまでの期間が長ければ長いほど維持コストが発生します。このような状況を打破するべく、猪岡さんらは製粉事業にも取り組んできました。

そば研がここまで農地を拡大し、販路が増えたのには理由があります。

(右から)代表取締役 猪岡專一さん 常務取締役 藤原洋介さん

それは、「そばで町に貢献することはできないかソバの産地として根付かせたい!」という強い思いです。猪岡さんは、「稼げる農業」「欲をもった経営」を追求してきました。

『農家は稼げない』を変える。私たちは『稼げる農業』を目指している。(猪岡さん)

少数精鋭の生産力

そば研のホームページを見てみると、インターネット上でそば粉の販売はしていません。なぜネット上で販売しないのかを伺ったところ、「作業効率などを総合して考えると、ネット上で一人ひとりへの販売はできない」とのことでした。

そば研は関東の製粉会社にもそば粉を納めていて、そこに小口対応を任せています。直接、そば研に来られる方にはなるべく対応するようにしていますが・・・。人件費や効率のことを考えると、できるだけ販売の手間を省き、生産力に重点を置くスタイルが良いと判断したそうです。

従業員5名という人数でどれだけうまくまわせるか。稼ぐ農業を目指せるか。それらを追求した結果が、現在の経営スタイルだと猪岡さんは語ります。

「3つの欲」をもつこと

「生産欲」「販売欲」「達成欲」という3つの欲をもつことが大事(猪岡さん)

生産欲」「販売欲」「達成欲」この3つの欲を忘れずにいることが、いいそばづくり・まちづくりにつながると猪岡さんはおっしゃいます。

農地を拡大し、より多くのソバを生み出す生産欲。少人数でこだわりをもって加工したそばを伝統と文化で売り出す販売欲。減反で荒れた田んぼを再度農地として守り抜く目的を達成する欲。

利益を上げることはもちろん、羽後町の課題を解決する仕事も、そば研は担っているのです。

求める職種、求める人材

ソバの生産者はまだ少ないので、このまちにもっと生産者が増えてほしいと願っています。人材はこれから事業を拡大していくにつれて、必要に応じて募集していきたいと思っていますと藤原さん。

ソバを生産していくうえで、農地をしっかりと担えるような、そば研のそばづくりに共感してくれる人が望ましいそうです。

取材を終えて:

種まきから成長まで2~3ヶ月と短い「ソバ」と、減反で荒れた田んぼに注目したそば研は、しっかりと「稼げる農業」を実現させています。

昔からそば屋は町の社交場として親しまれ、地域になくてはならないものでした。現在でも「西馬音内そば」を求めて多くの観光客が羽後町を訪れます。そば研は地域の伝統や文化を守り、継承していくために必要不可欠な会社なのだとしみじみと感じています。

◆そば研のホームページはこちら

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取材・文:じゃんご じゃんごブログ

写真:渡部みのり