湯沢市の秋田木工の曲木(まげき)家具は、秋田が世界に誇れる工業製品の一つです。
親会社である大塚家具のホームページには秋田木工のブランドサイトが設けられており曲木家具の歴史や特徴を知ることができます。
曲木は、ブナやナラなどの材木を蒸して金属の枠にはめて少しずつ曲げていく技術です。今回、秋田木工の工場を見学させていただき初めて作業をしているのを見たのですが、思っていたよりも速い!!木がこんなふうに曲がるのか!?と思うぐらいです。
親会社の大塚家具が、曲木職人たちの「匠の技」を動画にまとめています。一本の木が曲木家具に変わっていく様子が丁寧に描かれており、見ていた私も実際にやってみたくなるような映像でした。4分43秒、ぜひ、ご覧になってみてください。
日本初の技術を守って100年
秋田木工は、100年以上、この曲木の技術を守りつつ新たな発想でたおやかな曲線の家具を作り続けてきました。デザインの美しさに加え、片手で動かせる軽さと丈夫さが人気の秘密です。
風巻穣代表取締役は、「社員には、日本でうちだけしか作れない椅子を作っているのだという誇りがあります。109年前と基本的に同じ作り方で、職人が手をかけて作っています」と語ります。ほとんど伝統工芸と言ってもよいのでは?
秋田木工のある秋田県湯沢市は、首都圏からは離れていますが、ここから大塚家具を通して、人の生活を豊かにする他に類を見ない曲木家具を製作しています。
女性がイキイキ
現在、社員は78人。うち女性は15人だそうです。製造の現場は男性ばかりでは?と思っていたのですが、女性の活躍している部署も多く、大きな機械を動かしている女性社員の姿もありました!
毎年、地元の高校生を中心に採用していますが、大卒の人もいます。ここで働きたい、家具が作りたいと訪ねてくる人も多く、県外から来る人もいるそうです。
「高卒も普通科の生徒を採用していて、資格や経験は必要ありません。ただまじめで健康で、挨拶がちゃんとできれば」と風巻さんはおっしゃっていました。
待遇
仕事は8時15分から17時15分。残業は、ほとんどないそうです。
有給休暇は年に平均14日ぐらい取得しています。兼業農家の人は、田植え、稲刈り、リンゴやブドウの収穫などのために休暇を取られることも多いそうです。
ベテランから若手へ
10代から70代まで幅広い年齢構成となっており、平均年齢は30歳代後半。そして最年長はなんと!74歳だそうです。若手からベテランまでが肩を並べ、この貴重な技術を大切に受け継いでいることがよく分かりました。
仕事に一通り慣れたといえるまでに3年ぐらい。しかし、9つの工程をすべてこなせるようになるには何十年とかかるそうです。社内の教育制度は充実しており、新入社員は社内研修を受けながら何に向いているか確認し、本人の希望や、各工程のバランスなどを考えながら配属を決めていくそうです。各工程が全く違うので、技術の習得にはそれぞれの工程ごとに研修を行ってレベルアップを図っているそうです。
働いているときはもの静かな社員たちですが、スポーツ好きが多く、社内でバレーボールやバドミントンの大会を開催しているほか、駅伝も盛んで、みんなで練習しているそうです。
グッドデザイン賞
曲木の技術を生かし、剣持勇やソーレン・ウルリック・ピーターセンといったデザイナーとコラボして製作された家具の中にはグッドデザイン賞を取ったものもたくさんあります。
特にNo.16の椅子は秋田木工の代名詞のような存在で、2017年に運航が開始されたJR東日本の豪華寝台列車「TRAIN SUITE四季島」など「え?こんなところに?」と誇らしくなるような場所にも置いてあったりします。
◆秋田木工のホームページはこちら!
取材を終えて:
秋田木工が培ってきたデザインと技術には定評があり、家具の描く美しい曲線は人の目を引き付けて放しません。充実した職場環境で、伝統を守りながら、美しい家具を作る・・・。遠くからここで働きたいと訪ねて来る人がいる理由が分かります。私たちが工場を興味深げにきょろきょろしながら歩いていると、若い女性たちが目であいさつをしてくれるなど社内の雰囲気の良さが伝わってきました。
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