秋田の教育に新しいアイデアを!第3回ドチャベンイベントレポート

2017年11月23日に、秋田での起業アイデアを競う第3回ドチャベン(主催:秋田県)のピッチイベントが東京都千代田区の廃校になった中学校を活用した3331アーツ・チヨダで開催されました。「ドチャベン」とは、土着のベンチャーを意味する造語です。

(「ドチャベン」ホームページより)

真ん中は佐竹知事!(「ドチャベン」ホームページより)

今回は「教育」をテーマに、8月から数回にわたり、先輩起業家の話を聞いたり実際に秋田に出掛けてアイデアを練り上げ、コミュニティ部門、ベンチャー部門の2部門で書類選考を通過した総勢13チームが、それぞれの起業プランを発表しました。

その中からコミュニティ部門の金賞には、五城目で地域の高校生の夢を地域の大人と一緒に支援していくプランを発表した秋元悠史さんが選ばれ、賞金70万円を獲得しました。銀賞は高卒の離職者を防ぐため高校生向け求人票検索のウェブサイトと職場見学を容易にするアイデアを発表した浜中大地さん、銅賞はマタギの学校を提案した米倉信人さんが受賞しました。

金賞を受賞した秋元さんはスカイプ参加

秋田会場からスカイプを通じて参加した金賞の秋元さんは、島根県海士(あま)町で町おこしに携わり、同町で廃校寸前だった高校に全国から高校生が集まるようになったのを目の当たりにしました。五城目でも高校生がやりたいことを見つけ、それを地域の先輩が応援することによって、高校生と大人が「育ちあう」関係を作り、若者に地域への帰属感が育ち、いったん外に出た若者が地域に戻って来たいと思うようになると語りました。

銀賞の浜中さんは、高校生が高校の教員を経由してしか企業に応募する機会を与えられず、学校推薦を受け、一定期間までは一社しか応募できないなど制約の多い高校生の就職の仕組みに風穴を開ける必要があると詳細なデータを挙げて論じました。その上で、高校生と企業を結ぶ職場見学プラットフォームを提案。それを使うことにより高校生が県内にも魅力的な企業があることを知り多くの選択肢の中から就職先を選ぶことができるようになるとし、就職後3年での離職率が40%という状況を変えられると熱弁をふるいました。

浜中さん

銅賞の米倉さんは、マタギの学校を提案しました。北秋田市が発祥といわれるマタギには独特な文化があり、マタギの高齢化が進む中、その知恵や技術を伝承していく必要が高まっています。一方で、ここ数年クマによる人的被害が増加しており、これに対処できる人を育てる必要もあり、狩猟免許の取得を目指す人たちも対象にしたマタギの学校を開設したいと語りました。米倉さんはまた、勉強ばかりしている都会の子供たちに自然と共生するマタギの生き方を自然の中で学ばせたいそうです。

ベンチャー部門の金賞に輝いた木村芳兼さんが提案した「野人キャンプ」も、都会の子育て世代に対する自然教育ツアーの提案でした。

木村さん

木村さんは、鹿角市の地域おこし協力隊の一員。「熱狂的アウトドアばか」を自認する木村さんは、今の人間には主体的に生きる野生力が失われているとして「人類を野生にかえす」プログラムを作成し、この夏は子供たちが野山でキャンプをしたり自然と触れ合うさまざまな体験をさせ、親たちは湯治でいやされるというようなツアーを小規模に実施してフィードバックをもらいながらプログラムを練り上げているそうです。

左が木村さん(「かづの若者会議」ホームページより)

同部門銀賞を獲得したのは、地方に起業家を次々に生み出す仕組みづくりを提案した中山友貴さん。

中山さん

中山さんは現在、都内でフィットネスとコーワーキングスペースを合わせた施設を運営している起業家です。起業のリスクを回避するため、起業したい若者を起業を支援する会社に就職させながら事業を準備を進めるという方法で、次々に起業家を生み出す仕組みを提案しました。職住接近の環境の中で事業を興すための教育をし、資金調達も支援していくのだそうです。「起業に失敗した8割の人は同じところで失敗している」として、アドバイスがあれば失敗を回避しながらいくつもの会社を次々に生み出し、企業誘致や補助金に頼らず経済を活性化できると説明しました。

受賞者は、今後、自治体や金融機関の支援を受けて、提案の実現に向けて歩き出します。

文/写真:竹内カンナ