いきなり萌え系キャラがスマホを突き出している写真!なんだこれ?と思った方もいるかもしれませんが、秋田市でシステム開発やスマートフォンのアプリ開発をしているオクトライズが今いちばん期待をかけるアプリ「キラキラディスプレイ」のプロモーション画像です。以前、創業者の茂木聡代表取締役にお会いした時、秋田でアプリを開発している数少ない会社だとおっしゃっていたので、是非、お話を伺いたいと思っていました。
今回は、茂木代表と、同社が初めて採用したデザイナーの岡田美保さんに、アプリやシステムの開発を仕事にするにはどうしたらいいかをお聞きしてきました!
アプリ開発とシステム開発
オクトライズが開発する案件の比率はアプリが3割、ウェブ関係が7割。得意とするのは、インターネットのウェブサイトの情報を探したり更新があったことを検知するウェブスクレイピング。この技術では日本でも五指に入ると自負しています。
オクトライズは、スマホで竿燈が倒れないようにバランスを取るゲーム「かんとうろいど」(Android版)、秋田県立博物館の収蔵品を高解像度で鑑賞できる「秋田県博HD」など秋田らしいアプリを開発しています。その他には、「秋田美人×ソフトクリーム」という秋田県内のソフトクリーム情報など観光情報と秋田美人の写真集のアプリも!ユニークで楽しいアプリです。
プログラミングは言語です。多くの種類があり、ひとりで全てに精通するのは無理です。オクトライズには、Apple向けなら「Swift(スウィフト)」、Android向けなら「Kotlin(コトリン)」、ウェブサービスは「PHP」、Windowsなら「C#(シャープ)」といったそれぞれの言語のプロがいるそうです。そのため、さまざまな仕事が持ち込まれます。
「世界の誰かがやっているならできないはずがない、といつも言っているので、他で断られた仕事がよく持ち込まれます」(茂木代表)
クライアントは県内がほとんど。元々の発注先は首都圏の会社ですが、それを秋田県内のクライアントが受け、オクトライズが受注するというパターンが多いそうです。
創業は2008年、社員は7人で、まさしくベンチャー企業という呼び方がふさわしい会社です。社員は全員秋田県出身で、ほとんどの社員は秋田を離れたことがないとのこと。
プログラミングの勉強は独学でも
プログラミングはどうやって勉強するのかとお聞きしたら、多くの人は独学で始めるとのことでした。やる気があればプログラムもデザインも一人で勉強ができるそうです。ただ、時間と場所を決めて勉強したい、一緒に頑張る仲間が欲しい、という人には、秋田市でいえば、秋田コアビジネスカレッジや秋田情報ビジネス専門学校などで教えてくれるとのこと。ある程度の知識を習得できれば、プログラミングの仕事はできるそうです。
同社ではObjective-C(開発環境:Xcode)、Java(開発環境:Android Studio)、C#(開発環境:Visual Studio)の開発経験のある人を募集しています。しかし、仕事でプログラムを書いた経験がなくてもプログラミングの腕に覚えがあれば大丈夫だそうです。
デザイナーのお仕事
同社が初めて採用したデザイナーの岡田さんは秋田市出身で秋田大学で地域科学を勉強し、地元企業に就職しましたが、パソコンで仕事がしたいと職業訓練校で5カ月間ウェブデザインを学んでオクトライズに就職しました。求人募集を見たわけではなく、たまたまオクトライズに興味を持って訪ねて来たら、会社ではちょうどデザイナーの人材がいてもいいなと思っていたところだったのだそうです。就職って意外とこういう形で決まるもんなんですね。求人がなくても興味のある会社があればダメモトでアタックしてみても良いのかも。
「首都圏にも憧れはありましたが、大学も就職したいと思う会社も秋田にあったので『出なくていいや』と思いました。秋田は遊ぶ場所もあるし、人間が優しい。特殊なものは通販で買えばいいですから」(岡田さん)
夜に来て朝帰るというような自由な働き方が認められているオクトライズですが、岡田さんは毎日始業時間である9時30分に出社し、就業時間である18時30分に定時退社しているそうです。ただ、もっと仕事を覚えたら、残業してでも忙しい人をサポートしたいと話し、茂木代表が「え?そうなの?」と、びっくりしていました。「働き方改革」がバズワードになっている今の時代、岡田さんの願いは会社にとっては痛しかゆしです。(笑)
「口先だけでダイバーシティ(多様性)と言っている会社はありますが、オクトライズにはほんとに個人を尊重する環境が整っています。何もそういうことは表立って言っていないのですが、できています!」(岡田さん)
ちなみに給与は実力次第です。
会社には卓球台が常設されているそうです。どうもIT企業と卓球台は切っても切れない関係があるようで、卓球台はIT企業の業績のバロメーターというようなこともまことしやかに言われています。
プログラム開発のプロセス
プログラムの開発というのは、どんなふうに行われるのでしょうか?
茂木社長によると、開発の期間は普通3~6カ月。しかし、何年かにわたって何段階かに分けて進めることもあるそうです。
まずは、クライアントからどういうものを作りたいのかをヒアリングし、動かないモックを作ります。目に見えるようになるとクライアントが「こんなこともできる?」と新しい提案を出してくるので、さらに細かな点を詰めていきます。それからプログラムを組み始め、社内でテスト、クライアントにもテストしてもらい完成。
代表作キラキラディスプレイ
オクトライズは2年前に「キラキラディスプレイ(Kira2D)」というスマホやタブレットを劇場や何万人という観客が入るスタジアムで情報端末として使ったり、客席がマスゲームのようなパターンに見えるようにプログラミングによってスマホやタブレットの画面をコントロールしたり、ペンライトのように使うことが出来るアプリを開発しました。
この「キラキラディスプレイ」は、世界最大のクリエイティブ・ビジネス・フェスティバル「SXSW 2018」に出展され、イベント会社などからも引き合いがあり、次々と商談が進んでいるそうです。ブライダルやショールームなどでの幅広い用途が想定できるので、オクトライズを代表するアプリにしたいと、営業活動に力を入れています。
茂木代表のITバブル体験!
秋田にはIT産業が少ないと言われていますが、茂木代表は、前に勤めていた会社で、ITバブルを体験しています。ITの会社は、製品がヒットするとすごいことが起きるのです。
日本でガラパゴス的に発達した「ワープロ専用機」からパソコンへの移行が進んだ1990年代前半、茂木代表が入社した会社がワープロ文書をパソコンに転換する「コンバートスター」というソフトを開発、爆発的に売れたのです。マイクロソフトが「Office 」のワープロソフト「Word」のコードを公開していなかったので1年半掛けて地道に解析して作り上げました。Wordの日本語版が出来た時は、それが最初から組み込まれたそうです。
開発に手間が掛かり大変だったので、似たようなソフトはほかに1つしかなく、コンバートスターは面白いように売れました。社員の生活も夢のようでした。
「スキューバダイビングが好きだったので、仕事が一段落すると3週間ぐらい休みを取り、潜ってはメシ食ってまた潜るみたいなことを3週間やって、帰ってきて1週間ぐらいはぼーっとして、それからまた頑張るみたいないい循環がありました」(茂木代表)
茂木代表は、「私が仕事を始めた頃はMicrosoftもAppleもまだ小さかった時代。全く新しいものを秋田で作れたら面白いという気持ちを持ちながら仕事をしています」とおっしゃっていました。
確かに、今、世界で何十億人に使われているソフトやアプリは、10年前にはなかったものもたくさんあります。ヒット製品を開発したらすごい!アプリ開発にはそういう夢があります!!
取材を終えて
オクトライズは、コードを書くのが楽しい!、アプリを作りたい!というような人たちが集まっている会社です。面白いのは、「居候(いそうろう)制度」。プログラマーになりたい人が席とパソコンを借りて、会社で邪魔にならない程度に質問させてもらいながら勉強できる制度だそうです。そうしたエントランスレベルの人を育てようとする温かさと、世界初の面白いものを作りたいという意欲が混在する自由な雰囲気が同社の魅力だと思いました。
◆株式会社オクトライズのHP
◆秋田県就活情報サイト KocchAke! のオクトライズの採用情報
Kocchakeは、秋田県内企業の就活情報が満載のサイトです。
取材・文:竹内カンナ、じゃんご https://dochaku.com/