由利本荘市暮らし、大変なこともあったけど子育て楽しんでます! ままちょこ

9月25日、由利本荘市に移住した若いおかあさんたちが秋田暮らしのいいところ、そうでもないところを語るオンラインイベントに参加しました。

自然豊かな秋田県の中でも海あり山あり川ありの由利本荘は魅力的な場所だと思いますが、結婚してたまたま住むことになった人の中には暮らしてみるとどうなんだろう、子どもは馴染めるだろうか・・・」と不安な思いを持つ人も多いと思います。そんな移住者たちと由利本荘暮らしを一緒に楽しみたいという若いおかあさんたちのグループ「ままちょこ」の皆さんがリアルな体験を交えて語ってくれました。

また、もうひとりのゲスト、県南を中心に子どもたちに自然の中でのフィールドワーク体験を提供する活動をされている森の案内人である酒井浩先生はアウトドア体験がどれだけ子どもに大きな影響を与えるかについてお話ししてくださいました。

酒井先生は小学校の元校長先生で子どもが目を輝かせて自然の中で成長していく姿を見守ることが楽しくてしょうがないという方。皆さんの話を聞いているうちに、こういう大人に囲まれて育つ子どもたちがうらやましくなってきた1時間半でした。

ままちょこ

ままちょこはこんな活動をしています

菅原清香さん

 

ままちょこ代表、菅原清香(さやか)さんは東京出身で、移住して12年。小6,小1,幼稚園年少の3人のお子さんのおかあさんです。今はとても楽しく暮らしているそうですが最初は戸惑ったこともたくさんあり、移住を考える人たちに少しでも力になりたいと考えるようになったそうです。

 

わたしは親ですが、親である前に人間として楽しい暮らしをしたい。こっちに移住してきて、地域のことを知れば知るほど、人とつながればつながるほど住みやすくなると思いました。わたしは人との出会いを待てるタイプじゃないので、どんどん話しかけたり、子育てイベントにもたくさん行ったし、児童館とか子育て支援センターとかいろんなところに行き、知り合った人、幼稚園で知り合った人たちを誘ってままちょこをスタートしました

結婚して由利本荘に移住してきてゼロからネットワークを広げ、地域に馴染んできたら、こんどは後から移住して来た人を支援する団体を作った、行動力のかたまりのような人だと思いました。

佐藤由香里さん

佐藤由香里さんも東京出身。菅原さんと同様、積極的に動いて友達を探しました。移住直後は仕事をしていなかったし子どももいなかったのでまずは市の広報紙を読んでみようと考えました。広報紙を配ってもらうためには町内会に入らなければならないので町内会長さんの家に電話をしたのだそうです。緊張しながら事情を説明すると、電話の向こうの方(おばあちゃんだったそうですが)に、「何言ってるんだかわがらね」と言われてガチャンと電話を切られてしまったのだそうです。こんなショックな体験をして「ああ、もう町内会入らなくていいや」とすっかり心が折れてしまい、車の運転もしていなかったので旦那さまに時々、図書館や市役所に連れていってもらって広報紙を見ることにしたそうです・・・

しかし、そうやって広報紙に載っていたサークルに参加してみたものの、かなり年齢層の高いグループだったりして、すぐに親しい友達や仲間ができるには至らなかったのですが、働き始め、犬を飼い始めたことがきっかけになって少しずつ友達が増えていったそうです。

由利本荘生活の不便?

移住希望者のために、いいところばかりではなく困ったこと不便なところもリアルに伝えようというのがこのイベントの目的。ファシリテーターの平元美沙緒さんが、生活に不便はなかったかと質問すると、菅原さんは、車があればいいが、車がないと不便ですねと笑っておられました。免許は持っていましたが、由利本荘に来て初めて公道を運転したそうです。お買い物はスーパーとネット通販、生協を組み合わせるといいとおっしゃっていました。

福田志紀さん

愛知出身の福田志紀さんは、車は便利だが雪道の運転は怖い。ふだんとは全然違うと強調されました。ファシリテーターの平元さんも、「秋田ネイティブでも一度は恐い思いをしてますよね」とうなづいていました。

 佐藤由香里さんは、東京出身。4歳の女の子のおかあさん。2012年に由利本荘に来ましたが、おととしまで2年間は海外にいたそうです。買い物について、最初はイオンなど大きな店で買い物をしていましたが、今は個人商店を利用していると話されました。

個人商店だと食べたことのないものをどうやって食べるかを聞けるので便利だし面白いかなと思っています

こうした個人商店があること自体が今の時代、貴重です。

福田さんは、「コロナのせいで今はあまりおしゃべりしませんが、以前はスーパーでも、店の人が子どもに『めんこいね~』などと話しかけてくれました」と、地域の人との距離感がちょうどいいと感じると話されました。

結婚を機に田舎の代表のような秋田に来ることが決まった時、菅原さんは、親戚や家族からほんとにやっていけるの?と聞かれました。確かに東京にいればテレビや雑誌でみたものをすぐに買いに行ける。でも何年か住んで人間関係が構築されてくると、生活自体が楽しくなって、いろんなものがすぐに手に入らないことは大事なことではない、と思うようになったそうです。それにいまはネット通販がありますし。

なんか結局、いいところの紹介になってしまっていましたね。笑 でも、その後、少しずつ秋田暮らしの大変だったことが出てきてました~~

教育

秋田といえば小中学生の学力が全国でもトップクラスであることが知られています。移住者にとっても教育には期待が大きいと思われるので、秋田の教育をどう思うかについての質問もありました。

福田さんによると、「秋田県は家庭学習が充実していると言われています。(子どもに自主学習ノートを持たせて宿題を出し、親が丸つけをすることで、学校と親が子どもの学習の進行を見守るという取り組み)うちは小学3年生ですが、親が丸つけをしながら子どもと一緒にどうして間違えたかを確認していくのですが、子どもは自分からどんどんやっていきます。人に言われなくても勉強するリズムができてきたと思います。毎日のルーティンが当たり前になっています」と話されました。

共働きのおかあさんにとっては大変そうですが、平元さんによると、児童館や学童保育で宿題は終わらせ、帰ってからは〇付けだけなのでそんなに大変ではないとのことでした。

秋田県の教育は全国の注目を集めています

 菅原さんは、「東京の友人から宿題とか家庭学習が大変でしょうと言われますが、親は、子どものその日の疲れ具合とかやる気とかに合わせられるで、しんどいと思ったことはありません。今年1年生になった子は生まれて初めて勉強し、分からないところがあると怒って泣いて暴れてってやっていますが、担任の先生と連絡を取り合って学校と家庭とで相談しながらやっています」と話し、親が関わることが、いい効果を生んでいると考えているようです。

アウトドアライフが充実した由利本荘

由利本荘のよいところはどこかとの質問には、由利本荘市役所の工藤淳さんが、子どもが小学生になったので、自分もほぼ中学生以来、ひさびさに釣りに出掛けた話をされ、年齢に合わせてアウトドア系の遊びが気軽にできるのが魅力だと話されました。

小学生ぐらいの子どもが放課後にどこで遊んでいるかという質問には、皆さんが、口々に最近できたナイスアリーナを挙げられました。体育館や広い芝生のある公園で、学年の違う子たちが一緒に遊んだりスポーツができる場所になっているそうです。防災公園なのですが、驚くぐらいりっぱです。

「小さい子からおにいちゃんたちまでが一緒に遊んでいます。誰かがサッカーボールを持っていたら、そうした子たちが一緒に遊んでいます」(福田さん)

由利本荘市は共働きも多いので学童クラブも充実しているそうです。

地元産の食材

秋田ならではの食材は手に入るのかとの質問も出ました。少し前までは、大きなスーパーでは全国的に大量に流通している商品しか手に入らず、農産物や海産物の豊かな土地に住んでいるメリットがほとんどありませんでしたが、最近は違うようです。

福田さんによると、「大きなスーパーも地元のスーパーも産直コーナーを設けています。とても新鮮でその日の朝に採れたものが並んでいて、とてもお得です。由利本荘は海もあるので野菜だけでなくおいしい地魚も並んでいます。今の季節なら、ガサエビ。夫が大好きで、それをつまみに日本酒を飲んでいます。スーパーでも地魚のコーナーがあり、見たこともない魚が並んでいますよ」。う~ん、食の豊かさ、大事です!

佐藤由香里さんは、「食べ物は、秋田県内でも地域によっても違います。お赤飯に砂糖を入れる地域があったり、町ごとに違うといっていいぐらいです」と話されました。秋田には狭い地域でしか栽培されていない伝統野菜もたくさんあります。

菅原さんは、「すっごく早起きしないと閉まってしまう地元の市場で、地場の野菜や海鮮を買ってきて毎週のようにバーベキューをやっています。スキレットとかメスティンのような道具をいかに使いこなすかをめちゃくちゃ研究しています」と語り、質問した参加者の方からとてもうらやましがられていました。

秋田県内の地域差

由利本荘市の中心地は海に近いので風が強いけれどそれほど雪が多くないのですが、内陸で鳥海山の中腹にある矢島町はとても雪深くほとんどの家が小型の除雪機を持っているそうです。佐藤さんは、移住前に東京から旦那様の実家のある矢島町に行き東京に帰る日の朝に2時間、人力のママさんダンプで雪かきをした後、少し家でくつろいでいたら屋根から落ちてきた雪で玄関がふさがれてしまい、危うく飛行機に乗り遅れそうになったという経験をしました。

平元さんは、個人的な印象だと断ったうえで、秋田県では秋田市の北側と南側で人柄や文化が違う気がすると鋭い考察をされました。平元さんが秋田県北部の大館市に住んでいた時は、林業で栄えた土地柄のせいか、木材会社の社長さんなどが多く、それぞれ自立しているイメージがありましたが、南部は隣近所のつきあいが濃いとのことでした。これは農業が産業のベースになっているせいではないかと思っているそうです。

由利本荘市とは

参加者の中の由利本荘をよくご存知でない方のために、市役所の工藤さんが説明をしてくださいました。

由利本荘市は、秋田県南部の海側にあり、羽田から飛行機で1時間の秋田空港から車で約40分。新幹線で行くなら秋田駅まで3時間40分、そこから在来線で40分ほど。日本百名山の一つで出羽富士と呼ばれる鳥海山のふもとで、子吉川が市を横切っており、海は鳥海山の伏流水が流れ込み秋田有数の漁場。特に夏の岩ガキが名物。無数の島が点在し、松尾芭蕉に「象潟や雨に西施がねぶの花」と詠ませた景勝地の象潟もすぐ隣のにかほ市です。

お仕事事情

移住したくてもできない理由の筆頭に挙げられる仕事については市役所の工藤さんからお話がありました。にかほ市と由利本荘市には電子部品大手TDKのマザー工場があり、その周辺にTDKの工場と連携したサプライヤー企業も数多いため、製造業の求人は多めです。また建設業、介護職などの求人も多く、市役所など行政にも40歳未満の採用枠があるそうです。由利本荘市役所は、ハローワークと連携して求人情報を提供しているので、とにかく市役所に相談してほしいとおっしゃっていました。

自然の中で五感を養う

由利本荘の豊かな自然は、東京のように1時間も2時間も電車や車に揺られる必要なく5~10分出掛ければすぐに楽しめます。しかも、そこに名ガイドがいれば、気付きにくいものに気付かせてもらったり、詳しく説明をしてもらうことで学びが加わり体験の意義が深まります。

酒井先生と子どもたち

今回のイベントでは、そんな活動をされている小学校の元校長で理科の先生だった酒井浩先生のお話をお聞きしました。

酒井先生は、現在60代ですが、30代のころからボランティアで自然観察会を続けてきました。昔から子どもが好きで、子どもの笑顔を見るのが楽しみだったという酒井先生は、月に1回、釣りキチ三平の作者、矢口高雄先生が生まれた横手市増田町の釣りキチ三平の里で定期的にワ-クショップを行うほか、子どもたちと一緒に様々なスタイルの自然体験ワークショップを行っているそうです。コロナ禍ですべてのアクティビティが低調な中ですが、10月はほぼ土日全部予定が入っていると語っておられました。

「子どもたちは、自然観察会が終わるころにはまるで表情が違います。自然は人を変える。眠らされている感覚が覚醒するのです。大人だってそうです」

酒井先生は、「子どもたちが出会う事象の一つひとつがやがて知恵を生み出す」という環境問題を世界に気付かせた生物学者レイチェル・カーソンの言葉を挙げ、子どもの成長への自然体験の重要性を強調されました。

自然の中の人間関係

また、自然体験のもう一つの効果として、歳の異なる子どもたちと過ごすことが学校では得られない、いい体験になると指摘されました。

8月に花の百名山に数えられる栗駒山に行った時、小さな子が渡るには少し幅の広い川があったんですが、大きな子が小さな子に手を伸ばして引っ張ってあげていました。そうした姿を見ていて、自然の中にいると人間関係の枠がはずれ、人は優しくなれると思いました。(酒井先生) 

先生の活動はFacebookやホームページで知ることができます!小学生ぐらいの子が中心ですが、イベントによっては子どもをおんぶして参加されたおかあさんや1歳ぐらいのお子さんもいるそうです。

ままちょこや酒井先生について詳しくお知りになりたい方はこちらをご覧ください。

◎ ままちょこのブログ:https://mamachoco-yurihonjo.hatenablog.com/

◎ ままちょこのLINE:

 

◎ 酒井先生のFacebook:https://www.facebook.com/people/%E9%85%92%E4%BA%95%E6%B5%A9/100006642796682

◎ 酒井先生のHP https://hirochan07.hateblo.jp/?fbclid=IwAR1IP1Lag3i79UNFB1WSzBjL1VlBvzJ5gWImDzQYJcrnTrMHUNXRf_0FEVA

著書:

子どもたちが生き生きとしてだけでなく子どもたちと向き合う先生の目もきらきらしていて素敵でした。

秋田には人として育っていく上で大切な豊かな自然がある。それを知っているおどはんもわたしだけでなくたくさんいる。よりよき子育てを応援していきたいと思っています

移住支援策

移住希望者に向け、東京23区に5年以上住んでいた世帯には、100万円、単身なら60万円といった支援金があります。また、人材不足が深刻な分野の技術職・専門職には、さらに上乗せがあり、最大200万円に上る支援金があるそうです。細かな条件がありますが、詳しくは、こちらのリンクで。

ちょっと住んでみたい人のためには1泊1000円のお試し体験住宅「ここわき」があり、また家を探している人には空き家バンクのサポートや、後継者を探している会社や店舗と移住者を結ぶ事業承継のサービスも行っています。

由利本荘やにかほ周辺では、ここ1,2年、地元で人気のカフェを移住してきた夫婦が引き継いだり、空き家になっていた古い素敵な建物を借りてカフェを始めたりといった事業承継が話題になっています。また最近、おしゃれなカフェやパン屋さんが誕生するなど、若者や若い家族が楽しんで暮らせる場所なんだというのが感じられます。

由利本荘市は、専用サイトを設けるなど移住・定住に力を入れており、10月16日の「秋田でのリアルな移住生活に触れるオンラインツアー」や24日のあきた移住・交流&Aターンフェアなどのイベントの情報も、このサイトに掲載されているほか、空き家物件情報や各種支援策がワンストップで見られるようになっています。

竹内カンナ