秋田ケーブルテレビ、人口減を生き抜くビジネスに果敢に挑む

秋田市を中心としたエリアでケーブルテレビ事業を展開する秋田ケーブルテレビ(CNA)をオンラインとリアルのハイブリッドで取材させていただきました。同社のコアビジネスは、ケーブルテレビインターネット固定電話サービス。しかし、それ以外の話題でよくニュースになることが多く、中でも秋田犬の社員がいるとか、東京・渋谷のスクランブルスクエアという渋谷で今、いちばんおしゃれな場所に「ハチふるSHIBUYA meets AKITA」というショップをオープンしたとか、秋田犬に絡んだ話題が目につきます。

取締役兼コーポレート本部長 飯塚雅子さん

なぜ、ケーブルテレビの会社が秋田犬推しなのか、なぜ渋谷に秋田犬をテーマにした店舗を出したのか、同社の飯塚雅子 取締役にお話をお聞きしました。

世界に向けて秋田を発信したい

「2014年に本社を今の場所に移したのをきっかけに主要3事業以外にもいろいろチャレンジしようということになり、新しい事業を始めました」

まず、世界に向けて秋田を発信しようと、いろいろ調べた結果、AKITAというキーワードで英語で検索すると地名の秋田よりも秋田犬の写真がどっと出てくることに注目。秋田犬をフックにして秋田のファンを増やそうと考えました。

だったら、秋田犬を飼わないとね!ということで、「し〜な だいすけ」「し〜な さくら」という2頭の秋田犬を社員にしました。名字の「し~な」は、秋田在住の方ならご存知と思いますが、秋田ケーブルテレビの英語の社名「CNA(Cable Networks Akita Co.,Ltd.)」に由来しています。さらに秋田犬事業のマネタイズ(収益化)の一環として秋田犬のオリジナルグッズを開発し、販売も開始しました。

そして、発信するなら思い切ってハチ公ゆかりの土地である渋谷がいいんじゃないかいうことになり、たまたまご縁があって渋谷の新たなランドマークであるスクランブルスクエアに店舗を構えることになったのです。

渋谷スクランブルスクエア

この「ハチふるSHIBUYA meets AKITA」WE LOVE AKITAの代表の照井翔登さんに取材に行ってもらいました。

ぬいぐるみがいっぱい

とても広々しています。秋田犬のぬいぐるみがディスプレーされています。

秋田のいいものを知ってもらいたい!

秋田ケーブルテレビが、県外、さらには海外を視野に入れた事業に力を入れている背景には、少子高齢化などの課題を抱える秋田を元気にするためには外に目を向けていろんなことにチャレンジしていくしかないという考えがあります。

同社の総接続世帯数は2021年6月末現在で5万3413世帯ですが、秋田県の人口は大幅減が見込まれていますから、この世帯数も大きく減少するだろうと考えているのです。

おお、これは金萬ではないか!おお、これは蕗月堂のもふどら!秋田の有名店とのコラボ商品がいくつもあります。ここなら秋田に行ったこともない、おすすめのお菓子も知らないという人でも、秋田犬のキャラクターに目を止め、お菓子を手に取ってもらえそう。

ハチふるSHIBUYA meets AKITAの店舗デザインの特徴は秋田杉をふんだんに使っていること。商品を陳列した台は、巨大な曲げワッパのお弁当箱のよう。全体をデザインした設計士さんは、秋田の方だそうです。

お正月には秋田のお酒をふるまったり、稲庭うどんで有名な佐藤養助商店の実演試食会を行ったりしたそうですが、イベントにはぴったりの場所です。

ハチふるの店舗のある場所は、展望施設のSHIBUYA SKYに行くために多くの人が通るところにあります。

晴山店長(右)

「ここを起点にまず、秋田を認知していただく。ものを売るだけでなく体験したり、動画を見ていただいたりして、ここに来る方々に秋田をお伝えしていきたいと思います。コロナ収束後には、インバウンド観光につながるようなイベントなどの仕掛けを渋谷から発信していきたいと思っています。秋田から渋谷、渋谷から海外へとフィールドをどんどん大きくしていけば、われわれとしても、地域としても楽しくなるんじゃないかと思っています」と、秋田出身の晴山瑞希(みずき)店長も今後の構想を語ってくださいました。

秋田を盛り上げたい気持ちあふれる企業理念

秋田ケーブルテレビは、企業理念に「つながる楽しさ、広がる暮らし、秋田とともに未来を創造」と、どの事業も秋田という地域が抱える課題の解決につながるような展開を念頭に置いて取り組んでいます。秋田の人々が元気で幸せであってこそはじめて同社が成長していけると考えているからです。

2014年に同社が本社を移した建物は、もともと小児療育センターだったので、子どもが集まる場所にしようと考え、事業所内託児所を作り、社員だけでなく地域住民も子どもを預けられるようにしたことにもそうした思いがあふれています。また秋田駅に隣接した複合施設アルヴェの商業棟を買収して映画館などを含むビルを運営しています。コロナ禍の中でその一部を改修して、リモートオフィスを作ったりしています。

また、秋田公立美術大学と包括連携協定を結び、エントランス内にギャラリーを作り、3カ月に1度ぐらいのペースで企画展を行っています。これも多くの秋田の人たちに足を運んでもらいたいと思ったかったからです。

採用計画と欲しい人材

採用については、新卒では営業・事務・企画/番組制作・総務経理・広報などを担当する総合職と、技術系の総合職を募集しています。若い人にはいろいろな業務を経験してもらいたいと考えているそうです。また中途採用については、増員が必要になった部門のスキルを持つ方を随時、採用しているそうですので、同社に興味のある方は、どんどん問い合わせてみてください。番組づくりに興味のある人もいると思いますが、こちらはグループ内の子会社になるそうです。

どんな人に入って欲しいかとお尋ねすると、地元秋田に貢献したいという思いが強く、積極性と協調性を持ち、異動の可能性もあるため柔軟性を兼ね備えた人とのことでした。

特にこれからの時代は若い人の感覚で新しいことをどんどん考えて実行していってほしいので、中途採用については比較的若い30歳ぐらいまでとしているそうです。

採用のプロセスでは、男女にこだわらず、最も適任と思う人を採用しているそうです。男女比率はほぼ半々で、保育園が併設されているので、とても働きやすいのではないかと思います。考えてみると、秋田県内の会社を70社以上インタビューさせていただきましたが、企業内託児所は2社目。女性役員は初めてでした。 

週休二日制で、2019年の年間休日数は123日でした。もちろん通信インフラの会社ですから、部署によってはシフト制や土日勤務のある部署もあります。でも、代休は取得できるそうです。

入社時は、さまざまな部署を経験し、その後業務に必要な資格やスキルアップになる資格であれば、取得するために必要な費用は会社が負担してくれます。

コロナ禍以降、ITリテラシーの重要性が明らかになったことから、社員全員がITパスポート情報セキュリティマネジメントなどの資格を取得することになったそうです。

飯塚さんに、就活生に向けたメッセージをいただきました。

秋田は少子高齢化でお客様がどんどん減っていってしまうことが目に見えていますから、これからの時代に合ったサービスを提供し、新しい事業を開発していかなければならないと思っています。そのためにアイデアをたくさん持った若い人に入社してもらいたいと思っております!

若手に聞く

秋田ケーブルテレビがインタビューに選んでくださった若手は、1人が県外出身のIターンと秋田県出身者で首都圏から秋田にUターンのお2人でした。

浦谷さん、スポーツがきっかけで秋田に

浦谷夏未さん

最初にお話をお聞きしたのは浦谷夏未さん。7年前に秋田に来て昨年、秋田ケーブルテレビに就職しました。なぜ秋田に来たのかをお聞きしたら、「スポーツをやっていて」というので、何を?とお聞きすると、「バドミントンです」というやり取りで、おお!あの!とびっくり。昨年まで北都銀行で活躍していたあの浦谷さんだったのでした。

浦谷さんは滋賀県出身で、大学卒業後、北都銀行のバドミントン部で活躍し、昨年引退。現役時代から秋田ケーブルテレビの社員をよく知っていて、いい人が多いと思っていたことに加え、秋田を盛り上げる活動をしているのを知って、この会社で働きたいと思ったそうです。

引退しても秋田に留まったのはなぜか、と、とても気になったのでお聞きしてみると、「秋田の人のよさや温かさに触れて、秋田は魅力だなと思っていましたし、ケーブルテレビの方々と出会うことができ、この会社で頑張る機会を与えていただいたことがきっかけです」と秋田出身者としてはオンラインでなければ握手を求めてハグしたくなるようなお答えでした。

浦谷さんは今、ケーブルテレビのサービス契約や請求の処理などを行っているそうです。

第一線のスポーツ選手の生活から事務職への転換というのは大きな変化だったのではないかとお聞きすると、浦谷さんは、「まったく真逆の生活で、運動不足になっているなと思いますが、全職員が同じフロアで働いていて、他部署の方とも連携しやすく、働きやすい会社だと思います」とおっしゃっていました。

休日の過ごし方については、「結構、オンとオフが激しくて、オンの時は温泉を巡ったりするんですけど、オフの時は一日中家でゴロゴロしていたりします」とのこと。バドミントン漬けの生活からの開放感を味わっているのかなと思いました。

県内のお出掛け先としてはどんなところが多いかとお聞きしたら、男鹿半島の「ゴジラ岩」には毎年行っているそうです。夕陽がゴジラ岩の向こうに沈む瞬間、ゴジラが火を噴いたように見えるのはなかなか楽しいですよね。

将来の夢をお聞きすると、「具体的な夢ではないんですけど、秋田で幸せになりたいですし、秋田の人を幸せにしたいと思います」というこれまた秋田出身者としてはじーんとくるお答えでした。

安部さん、県立大学卒業し東北で10年働きUターン

安部 達也さん

建設会社に就職して10年たち、大学で学んだ通信技術の知見が生かせる職場で働きたいと思い秋田のAターンセンターに行って相談し就職活動をして秋田ケーブルテレビと出会いました。秋田ケーブルテレビは2019年にローカル5Gの免許を東北で初めて取得しており、新しい技術で秋田に貢献できるかなと思いました。

ローカル5Gとお聞きして、携帯電話のこと?と首をかしげていたら、次世代モバイル通信「5G」の技術を使って、企業や自治体が専用の5G環境を構築・運用することだそうです。

ローカル5Gは今、多接続で大容量の動画を視聴でき、低遅延つまりリアルタイムに近いので、例えばリモートで建設現場のクレーンを動かすとか遠隔医療に使うとか、その場にいなくても何かをリアルタイムで動かしたい場面で利用することができ、実証実験が進められています。

この技術でこのまま先端を走り続け、秋田の生活も便利になり、離れて行った若者が戻ってきたり、秋田にいたいと思うような環境づくりになり、秋田の発展につながるようなサービスに育っていければいいなと思っています。

安部さんから就活生へのメッセージ

秋田ケーブルテレビという会社は新しい技術であったり新しい面白いことを積極的に取り入れてる会社ですのでどんどん意見を言うとそれを尊重して取り入れてくれる良い環境も揃えていますので是非秋田ケーブルテレビに来ていただければと思います。

浦谷さんの就活生へのメッセージ

秋田ケーブルテレビは女性社員も結構おりますし、女性が働く環境もすごく魅力的だと思います。会社のサポートもしっかりしていますし、快適に働ける場所だと思います。新しい事業もどんどん進めていて秋田を盛り上げる活動も展開していますので皆さんと一緒に働けるのを楽しみにしております。

* * * * *

秋田ケーブルテレビは、本業の通信インフラや社名からは想像もできない多彩な事業にチャレンジをしている会社だなと思いました。ローカル5Gでも是非、全国に展開できるようなサービスを生み出していただきたいと思います。

取材:照井翔登、竹内カンナ

文:竹内カンナ

◎秋田ケーブルテレビのホームページ

 

 

 

◎秋田ケーブルテレビのKocchake!情報