人口3万人の鹿角市に3年で100人以上が移住

秋田県鹿角市の地域おこし協力隊6人が東京に集結するというので2月4日の夜に「BETTARA STAND日本橋」で行われたイベントに行ってきました。

この日のテーマは「地域おこし協力隊のセカンドキャリア」。会場はドアの代わりにビニールのカーテンがあるだけで冷たい外気が流れ込んでくる建物なんですが、テーブルが実はこたつになっていてけっこう暖かかった!

鹿角市について説明する市役所の阿部朗人さん

イベントでは、鹿角のみなさんが作ってくれたきりたんぽ鍋と鹿角の地酒がふるまわれました。

鹿角市とは

岩手県と青森県の県境にある鹿角(かづの)市。今はこんな感じ。冬は曇りの日が多いといいますが、雪原と開けた青空のコントラストが美しいですね。

鹿角市役所の阿部朗人さん、秋田県には「角館(かくのだて)」とか「男鹿(おが)」といった地名があり、よく間違われるので、「かづのと読みます。これだけは絶対に忘れないでください!!武家屋敷あるとこだよねとか言われるんですが、そこではありませんので」と強調し、笑いを誘っていました。

それぞれの夢を持って鹿角に着任した地域おこし協力隊6人のうち4人が今年度で任期満了。彼らの鹿角での「移住コンシエルジュ」としての活動の軌跡をたどり、卒業後の新たなチャレンジを紹介しよう、もっと鹿角にかかわりたいという人を増やそうという寒い2月の夜の熱いイベントでした。

今、鹿角市への移住者数は増えています。約3年で57世帯102人が移住したそうです。20歳~30歳代が多く、関東圏からの人が大半だそう。そのうち鹿角に地縁のないIターンが56人とUターンの38人より多く、残りが県内から。

その原動力となった協力隊員たちは任期終了後も鹿角市に貢献したいとNPO法人「かづのClassy」を設立し、来年度以降も鹿角市の移住促進に協力していくそうです。

鹿角市の地域おこし協力隊員たち

鹿角の特産品をあえて4つに絞るなら、商標登録もしている「かづの北限の桃」、赤身肉の「かづの牛」、ジューシーな「八幡平ポーク」と、独特な甘辛だれを使ってジンギスカン鍋で焼く「鹿角ホルモン」

鹿角の桃、牛、豚、ホルモン

「牛やポークは分かるけど、モモがこんな北で?秋田にホルモン焼きなんかあった?」というのが多くの方の反応ではないかと思いますが、鹿角では古くから果樹の栽培が盛んで、20年ほど前から桃の栽培が始められたそうです。 鹿角ホルモンは、 戦後、「ホルモン幸楽」の創業者が、関西で大衆的に食べられていたホルモン焼きをアレンジしたホルモン鍋を鹿角に広めたのが始まりだそうです。 鹿角がかつて鉱山で栄え、労働者の比較的安価でおいしいスタミナ源として好んで食べられたことや、ホルモンの材料となる牛馬がたくさんいたことも、鹿角でホルモン鍋が流行った理由だそう。首都圏にお住まいの方で鹿角ホルモン鍋を食べてみたい方、西荻窪にも『秋田ほるもん酒場』というお店がありますよ!

協力隊員の紹介

協力隊のメンバー、個性派ぞろいです。まずは木村芳兼さん。鹿角出身の奥様と娘さんと一緒に移住して来ました。秋田県のローカルな起業プランを競う「ドチャベン(土着+ベンチャーの造語)2017」のベンチャー部門で、金賞に輝きました。このドチャベンで「熱狂的アウトドアばか」を自称する木村さんが提案したのは、「人類を野生にかえす」プログラム。協力隊を卒業した後は、世界中の親子連れを集めていろんな体験をしてもらうツアーを企画したり通信教育による教育支援事業をしていく予定だそうです。

ワイルドな木村さん でも実はやさしい

早川航さんは、協力隊みんなのまとめ役だそうです。以前はコンサルティングをされていたそうで、任期終了後は、農業関係のコンサルタントとして地域に貢献していきたいと考えています。

早川さん ずっと前から鹿角で暮らしているようになじんでいる

松村託磨さんと松村菜摘さんはご夫婦。現在、燻製ビジネスの起業を準備中。もともと趣味で燻製を楽しんでいたのだそうですが、隣の家との距離が離れている鹿角では燻製の煙でご近所迷惑になることもないというわけで、どんどんのめり込み本格的なビジネスにしようということになったのだそうです。

松村夫妻 初日の出を見に十和田湖へ

今年度着任した勝又奈緒子さんは、神奈川県出身。夫と息子さんの家族3人とで移住しました。首都圏でジュエリーの販売の仕事をずっと続けるつもりでいたのですが、子供が神奈川県川崎市で保育園に入れなかったのをきっかけに、もっとのびのびとした環境で子育てをしたいと思い移住を決意したそうです。お子さんは鹿角で真っ黒に日焼けし、はだしで駆け回っているそうです。

勝又さんの家族 縁側でくつろぐ幸せ

菅原由紀子さんも今年度着任しました。以前は薬局で受け付けをしていたそうです。ご両親が埼玉県からふるさとの鹿角市に帰ったのをきっかけに「そういう道もあるなあ」と移住を決めました。この写真のかわいい雪だるま、もっと大きくしたかったのに、あまりに気温が低く雪がさらさらで固まらず大きくできなかったのだそうです。

菅原さん 寒すぎて雪が固まらないので大きな雪だるまが作れなかった!

移住の不安を解消

地方への移住。美しい自然へのあこがれや家族と過ごす時間が増えるだろうなどという期待はあっても、仕事や生活の面の不安は大きく、なかなか踏み切れない人も多いと思います。今回のイベントでは、そうした不安に協力隊員の皆さんが答えてくれました。

まず、地元の方たちとの付き合い方について木村さんに聞きました。隣の人が何をする人かも知らず、自治会活動へ参加することも少ない都会と違い、木村さんは、月に3回ぐらいは会合への出席し、すぐに役職につかせられてしまったといいます。しかし、しぶしぶ飲み会に顔を出しているうちに、最初は秋田弁が分からないこともあって話もはずまなかったのですが、しだいに顔や名前を覚えてもらい、そのうち、いろいろ助けてもらったり、仕事につながることも増えてきたそうです。

次は移住の初期費用について早川さんの体験をお聞きしました。移住には引っ越し費用のほか、移住後の家賃や車が必需品であることを考えるとけっこうお金がかかるそうです。しかし鹿角では1500万円でけっこういい家が建つ、中古住宅なら400万~500万円。なので買った方が安い!引っ越し費用については、早川さんたち移住コンシェルジュが市に提案し、9万円を上限として掛かった費用の半分を補助金で支援してもらえるようにしたそうです。冬場はプロパンガス代金が月に4万円もかかり度肝を抜かれたそうですが、薪ストーブにするなど、工夫すれば低コストで暮らせるそうです。

勝又さんには子育ての不安についてうかがいました。勝又さんは移住前に保育園を選ばなければならなかったのですが、現地に行くことができず、パンフレット以外情報がなかったそうです。そのため移住後に12園ある保育園をすべて回って情報を集め、保育園情報を分かりやすく発信するための活動をしています。調査の結果、川崎では園庭のある保育園がほとんどなかったのに鹿角ではほとんどの保育園に広い園庭があることが分かりました。また鹿角市の託児の制度が非常に充実しており、首都圏では一時保育のために最初に入会金として10万円もかかるところがあるのに対し、鹿角の「ファミリーサポートセンター」では入会金は無料。東京では1時間1500円ぐらい掛かる一時保育が400円だそうです。このため、お母さんたちはイベント・サークル、料理サークルといった趣味の集まりにも気軽にも子供を預けて参加することができるそうです。勝又さんは今後、移住イベント以外に地元のお母さんや子供を巻き込んだイベントや、地元の人たちとのイベントもやっていきたいと考えているそうです。

鹿角市と地域おこし協力隊員のチャレンジ

地域おこし協力隊、多くの自治体で活躍しています。しかし鹿角市のように一時期に6人もの隊員が集まる例は多くありません。過去に、仲間もいず、気軽に相談する人もおらず、市役所の支援体制も十分でない中で、地元になじむことができず去って行った隊員がいたのだそうです。その苦い経験を踏まえ、隊員を採用するときは2人以上とし、引っ越し費用の支援制度を設けた例からも分かるように、協力隊員の意見をできるだけ反映しようとしているそうです。

このイベントを通じ、鹿角市と協力隊員の一致団結感がすごい!と思いました。隊員は、鹿角に来る前は定収入を得ていた人たち。その人たちが新しい事業を自分で立ち上げていくのは容易ではないはず。しかし、自治体の手厚い支援体制だけでなくインターネットでの業務受託やネット販売の仕組みの敷居が下がり、どこにいてもスモールビジネスを起こすことのできる環境が整ってきているという印象を受けました。

鹿角市への移住にご興味を持たれた方はこちらへ☟

鹿角市政策企画課鹿角ライフ促進班
TEL:0186-30-1310
FAX:0186-30-1122
E-mail:k-life@city.kazuno.lg.jp

(2018年3月6日)

▼文:竹内カンナ

秋田市出身。WE LOVE AKITA 記者。米経済通信社で長年、日本の金融経済のニュースを幅広く担当したあと、現在は 米経済紙の日本語版の翻訳のかたわら、秋田の活性化について考え続けています。

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