秋木製鋼株式会社は、能代市で鋳造と機械製造を手掛ける会社です。電気炉や高周波炉を持ち、金属を溶かして型に流し込む鋳鋼から、鋳鋼によって作った部品を機械に組み立てるところまで一貫生産しています。
主な製品は火力発電所や原子力発電所といった場所で使われる高温・高圧に耐えられる重電機器です。
「秋木」は、昔、「木都(もくと)」と呼ばれた能代市を代表する木材加工会社だった秋田木材株式会社の略称。秋木製鋼は、その子会社として誕生しました。
秋木製鋼は2年前にもお邪魔させていただきましたが、新たな事業の開発を進めていると伺い、昨年5月に就任した高崎融社長と、新事業を担う若手の梅田侑さんの取材をしてきました!
秋木製鋼の現場
秋木製鋼の工場では電気炉で金属が真っ赤に融け、溶接の火花が飛び、何トンもありそうな金属の部品がぐるぐると回っており、ヘルメットと安全靴が似合ういかにも男っぽい職場です。
高温・高圧の過酷な環境で長年にわたって使われる製品を受注するためには、顧客の信頼が欠かせません。信頼性の高い製品を作るため、同社は高温・高圧に耐えられる新たな材料を開発するなど、高度な技術を培ってきました。
しかし、塗装や鋳型に砂を詰めるといった作業にはきめ細かな技術が必要。現在、2人の女性も製造現場で活躍しており、米川さんは、社長よりもキャリアが長く、社会人のお子さんがいらっしゃるとか。
新社長は東京で営業一筋
高崎社長は、能代市の少し北の八峰町出身ながら、入社以来ずっと日本橋の東京支店で営業一筋。技術力を誇る会社の社長としては少し意外な感じもしましたが、同社の顧客である大企業との情報交換のために、東京支店は非常に重要な役割を持っているのです!
新たな時代へ
発電業界が化石燃料から新エネルギーへ移行する中、秋木製鋼は、この数十年の主力製品だった火力発電所の重電部品から新たな分野への移行を高崎社長主導で推進しています。
「これまで培ってきた鋳鋼業というところはぶれず、コンプレッサーの部品など、これまでの技術を生かせる分野に進出して行こうとしています」(高崎社長)
コンプレッサーとは、圧縮した気体の元に戻ろうとする力を使ってさまざまなものを動かす機械で、送り込むエネルギーを調節する役目も果たします。
秋木製鋼はこれから伸びる分野に向かって幅広く新事業を開拓していこうとしているのです。
新事業の担い手
今回の取材で若手代表としてお話を聞かせていただいた梅田侑さんが、これからその新事業の中心になることを期待されている人材です。入社6年目。生粋の能代っ子で能代工業高校機械科出身。鋳鋼工場で作られた部品を組み立てる仕事を入社以来続けています。
「たくさんの部品を集めて、それを自分で組み立て、作り上げていくのは面白いです。完成図だけを与えられて、作業の手順から何から自分で考えていきます。組み立てにはどういう順序で作業を進めればいいかを考え、時には必要な道具を自分で作ることもあります」(梅田さん)
作業の手順を間違えると、やり直しがきかない場合もあるので、どのように作業を進めるかを予め決め、その通りに進めることが非常に大切だそうで、緻密な頭脳と創意工夫が必要な仕事です。
梅田さんは、スポーツ好きで、夏は草野球を楽しんでいるそうです。会社でも昼休みにはキャッチボールをしたりしているとのこと。冬はバスケットボール。母校の能代工業高校は全国的にもバスケットボールの強豪として有名ですが、町を歩けば街灯もバスケをモチーフにしているし、体育の時間もバスケばかりだったそう。生活にバスケが溶け込んでいるようです。
就職を決めたきっかけ
秋木製鋼に就職を決めたのは、高校3年生の時に同社でインターンシップを体験した時。組み立ての部門で3日間働いてみて、何を作っているのかさっぱり分からず、それが逆に面白いと思ったのがきっかけだそうです。埼玉県の製造業の会社にも見学に行きましたが、人混みが苦手で都会には馴染めないと感じたそうです。
同世代の社員が多く、皆、仲が良いことや、社員旅行やバーベキューなど社内行事がけっこう多いことも楽しんでいるとのことでした。
将来の夢をお聞きすると、会社が今進めているコンプレッサーなどの新しい製品にどんどんチャレンジしていきたいとのこと。そしてもっと後輩がたくさん入ってほしいと話されました。
能代工業高校出身が半数以上の地元密着企業
秋木製鋼の社員の半分以上が能代工業高校出身です。この1,2年は毎年の採用人数は1~4人だそうです。
同社の現場では、かなり特殊なスキルが必要。その上、鋳鋼業と機械製造では仕事が大きく異なります。工業高校でも経験できるような作業ではないため、入社してから先輩についてOJT(職場内訓練)で仕事を身に付けていきます。
技術と品質が売り。製品には作り手の人間性が表れるため、誠実さやまじめさを大切にしています。一人ひとりの専門性が非常に高いので、基本的に人事異動はあまりなく、一つの職種を極めるイメージです。
社長から若者へのメッセージ
最後に高崎社長に若者に向けたメッセージをお聞きしました。
「当社の製品は、短いもので1カ月、長いものは3~4カ月かけて作り上げます。ゼロから作り上げる楽しみがあると思います。是非、若い人に興味を持ってもらいたいと思っています」(高崎社長)
取材を終えて
秋木製鋼は、金属を溶かして型に流し込むところから機械の組み立てまでを一貫して行える上、この二つの部門がどちらも高い技術を持っているため発電設備のような高温高圧の厳しい環境に耐えられる信頼性の高い部品を製造できるのです。こうした技術は海外の需要が期待できますからコンプレッサーなどの新分野とともに海外展開にも期待したいと思います。
◆秋木製鋼株式会社のホームページ
◆秋田県就活情報サイト KocchAke!(秋木製鋼株式会社の採用に関する詳細が掲載されています)
取材・文・写真:竹内カンナ・じゃんご https://dochaku.com/