三種町、コロナ疲れも吹き飛ぶ、美味な地元食材いっぱいのイベントを開催

7月11日、新型コロナウイルスの感染が拡大し、外出の自粛が求められる中、秋田県の三種町の皆さんがオンラインで町を紹介するイベントを開催しました。

題して「秋田のローカルフードを楽しむオンラインイベント!食べられるエメラルド『じゅんさい』と『しっぽ豚』をゆずぽん酢で味わう絶品おうち夏しゃぶ」!

会議ソフトのZoomを使えば、誰でもどこからでも参加が可能なのは分かります。が、オンラインのイベントで「じゅんさい」と「しっぽ豚」はどうやって食べるんだ?と思いませんか?

イベントの前日に、三種町から食材セットがクール宅急便で送られてきました。箱を開けてみると、生じゅんさいかわい農場・豚バラスライス、高知県安芸郡馬路(うまじ)村のゆずぽん酢しょうゆ、さらに3種類の日本酒(鳥海山、秋田犬ラベル、雪の茅舎)、お米はほとんど店頭に並ばない「下岩川舞・あきたこまち」、「サンキューメロン」という三種町産ブランドのメロンと、盛りだくさんです。参加費は3500円なんですが、信じられないお安さ!しかも、メロンの皮には、食べごろの目安が書いてあり、その日付がイベント開催日になっています。(食べごろの目安が書いてあるメロンを初めて見た~!)

イベントの開催時間は午後6時から8時半に設定されており、夕飯をいただきながら参加するスタイルです。開催時間前に、じゅんさいを洗い、しゃぶしゃぶ用の昆布だしを用意し、鍋をスタンバイしたら、パソコンを開いて、Zoomを立ち上げ、参加ボタンを押します。

全体の司会は、東京の日本橋馬喰町でコワーキングスペースBAKHUB(バクハブ)を運営する盛武美帆子さんです。三種町の皆さんは、レストラン「ハーベリー」に集まり、司会は同町の地域おこし協力隊の湯沢晃平さん。

三種町の会場にはじゅんさい農家の志戸田義友さん、豚肉生産者であるかわい農場川合博さん、三種町に移住してきた農家の森山大輔さん、ハーベリーのオーナーの山本智さん。そして何か素敵なご縁があるのでしょう。高知県馬路(うまじ)村からはポン酢を提供してくださった農協の方々、東京日本橋コワーキングスペースBAKHUBの皆さん、その他全国各地に住む方々でした。

イベントは、オンライン会議用ソフトのZOOMを使って行われました

まずは、ハーベリーの山本さんがじゅんさいしゃぶしゃぶの作り方を説明してくださいました。

鍋にだし昆布を入れて、ごく弱火にし、沸騰する前に昆布を取り出して、少量の日本酒をたらし、まろやかさを出します。次に、沸騰させないで弱火にしただしの中に、かわい農場の豚肉をそっといれて、しゃぶしゃぶさせて、お皿にとり、馬路村のポン酢でいただきます。

じゅんさいについては、同じく弱火にしただし鍋の中に遠慮なく入れる。20-30秒ほどたつと、エメラルドグリーン色に変わります。その瞬間を逃さずにじゅんさいを豪快にすくい、のどに流し込むようにいただきます。じゅんさいしゃぶしゃぶのポイントは、煮立たせないこと。自分で食べる量のじゅんさいを鍋に入れて、じゅんさいを食べたら、お肉を食べる量だけ入れて食べる、を繰り返します。

三種町の会場ではこんな感じでじゅんさい鍋を作っていました

しかし、つるっつるのじゅんさいを箸でつまんで鍋でしゃぶしゃぶして口に運ぶというのは至難の業。筆者は鍋用の穴あきお玉ですくってお皿に入れ、それを口に流し込むようにしていただきました。

山本さんはかわい農場の豚肉について、「お肉の脂身が多く、この脂身がおいしい、豚の脂身はアミノ酸が豊富で体に良い。豚肉は調理するとけっこう灰汁(あく)がでて、ほかの食材にまとわりつくことが多いのですが、かわいさんのお肉はほとんど灰汁が出ないのが特徴です」とおっしゃっていました。ほんとに豚肉の脂身がトロ~として美味でした。じゅんさいは、ゼリーでつるっとした触感ですが、芯には歯ごたえがあります。一見食べ応えのない野菜のようですが、食べ進めていくうちに満腹感が増してきます。酢の物としていただくことが多い食材ですが、昆布と豚肉の出汁でしゃぶしゃぶっとしてゆずの香りのポン酢、大根おろしと一緒にじゅんさいをいただくのはとても贅沢な食べ方だと思いました。

次に、じゅんさい農家の志戸田さんが収穫方法について説明をしてくださいました。三種町では、じゅんさいの摘み取り体験ツアーを実施しており、志戸田さんの沼の摘み取り体験ツアーは、午前9時から午後4時までの間の最長3時間だそうです。雨の日でも大丈夫ですが、雷が鳴ったり台風が来たら中止です。じゅんさいは、木舟に乗って収穫します。バランスが難しそう。

続いて、今回ゆずの香りさわやかなポン酢を提供してくださった高知県馬路村の農協の皆さんが同村について紹介をしてくださいました。

馬路村の人口は850人、村の面積の96%が山で、残りの4%にゆずを植えているそうです。高齢化が進んでいることなどもあり、青果出荷ではなく、ポン酢や飲料等の加工品の生産を中心に手掛けておられるとのこと。馬路村には、シカやサルが多く、ゆずの皮を剥ぐといった食害もあるそうです。年配の方は冬にイノシシ狩りをして牡丹(ボタン)鍋にして食べることもあり、シカは、一匹捕獲すると約1万6000円の報奨金が出る制度もあるそうです。

ところで、みなさん、いまさらですが、三種町って知っています?知らない人けっこうおられるのでは?知らなくても無理もありません。平成18年に琴丘町と八竜町と山本町が合併して誕生。まだ10年ちょっとしかたっていないのですから。

湯沢さんが、三種町の紹介をしてくださいました。ちなみに、YouTubeにも三種町の紹介動画があります。

四季折々の三種町の美しい風景、稲刈りの様子、じゅんさい摘み取り大会、運動会、お祭りなどのイベントの様子、子供たちが笑顔で楽しそうに遊んでいる様子が大仙市出身のシンガーソングライター青谷明日香さんのゆったりとした音楽とともに映し出されています。(橋本五郎さんや佐竹知事、昨年の横浜でのイベントでカレーじゅんさいや黒蜜きなこじゅんさいといったユニークなじゅんさい料理を作ってくださったさくら亭の桜田さんも出演してました)三種町の人口は1万5000人強ですが、毎年減っているそうです。

琴丘町はソラマメやウメ、山本町はじゅんさい、八竜町はメロンの産地として有名で海に面しています。三種町という町名には、この3つの町に流れる三種川のように一体感を持った町になれるようにとの願いが込められているそうです。

三種町のイベントで有名なのは、毎年7月最終週の「サンドクラフトinみたね」。極めつけは「世界じゅんさい摘み取り選手権大会」。今年は新型コロナウイルスのためほとんどのイベントが中止になってしまいましたが・・・

毎年じゅんさいの日(7月1日)には、世界じゅんさい摘み取り選手権大会も開催されています。じゅんさいの日が7月1日になった理由は、6月「June(ジューン)」は「じゅん」と、31日は「さい」と読む語呂合わせで6月31日となりますが、6月31日は存在しないのでの翌日(7月1日)になりました。世界選手権では、ペアで(小舟の前と後ろに座る)じゅんさいの摘み取りを行う部もあります。

ちょっと古い映像ですが・・・
今はすごい人気で、申し込みを開始すると1日で満員になってしまう状態。いろんな部(ペアの部、一人の部、品質の部、量の部)があり、無理して一生懸命採らなくても、小舟に乗ってじゅんさい採りに夢中になっているとほかのことはどうでもよくなるという素晴らしい効果があるので、そういう参加の仕方もおすすめです。

じゅんさい農家の志戸田さんは、じゅんさいは鍋にして食べるのが一番おいしいとおっしゃっておられました。でもじゅんさいは高級食材ですから、鍋で豪快に食べるというのはとても贅沢なことです。

じゅんさいには格付け(サイズ)があり、その価値は「ぬめり」にあります。洗うときは、なるべくサッと洗ってぬめりが取れないようにしていただきたいです。小さい方がぬめりがたくさんついていて高級品です。ただ、鍋にする場合は、大きいほうが食べ応えもあり、食べやすいそうです。

でも小鉢の酢の物なんかでは、小さいもののほうが合います。秋田のじゅんさい農家は家族経営のところが多いので、県外に販売しにくいんです。人の目が行き届くとおいしいものができますが、県外に大々的に売るとなると、まったくやり方が変わってきます。家族経営だと効率は悪いかもしれないけど、自分の納得のいく高品質なものが作れるそうです。

森岳温泉祭りにも毎年、町外から多くの人が訪れます。今年はご多分に漏れず中止ですが、一昨年は岡本真夜さん、昨年はWANDS(漫画「スラムダンク」のテーマ曲「世界が終わるまでは」の歌手)が音楽で盛り上げてくれたそうです。

ちなみに、湯沢さんはこの日、じゅんさいがプリントされたTシャツ(「I♡JUNSAI」のロゴとじゅんさい(コロンとした形の緑色のじゅんさいがカワイイ)がプリント)を着用されておられました。湯沢さんによると、三種町にある「じゅんさいの館」で販売されているそうです。

右端の湯沢さんが来ているTシャツのじゅんさいのイラストを使って背後からじゅんさいについて説明する志戸田さん

このほかにも”No Junsai, No Life”というロゴ入りのTシャツ、じゅんさいのLINEスタンプもあるそうです。司会の盛武さんは「そのTシャツを着て会社に行く勇気はありませんが、欲しいです!それを着ていたら、会話が弾みそう」とおっしゃっていました。

次は食材について、生産者のみなさんからお話をお聞きしました。豚肉をご提供くださったかわい農場のかわいさんによると、「しっぽ豚」は中ヨークシャー交雑という希少種で、かわい農場ではソーセージなども生産しています。

恵まれた自然環境を生かし、微生物との共生も考えた飼育をしているので、ストレスなくのびのび育ち、通常は必要な消毒を行っておらず、しっぽを切らずに育てられるので、「しっぽ豚」と呼んでいるのだそう。三種町ではかわい農場のほかじゅんさい館でも販売しています。秋田市ではチーズのあべで買えるそうです。

かわい農場の看板はかわいいピンクの豚

デザートは「サンキューメロン」。三種町はかつて国内第2位のメロンの産地だったのですが、現在の農家の数は最盛期の10分の1くらいに減ってしまったそうです。

このサンキューメロンは三種町にしかない品種で、見かけはプリンスメロンのような感じで高級メロン(ネットメロン)ぽくないのですが、味は最高だそうです。この日が食べごろというシールが貼られたメロン、ほんとに甘くてジューシーでした!

参加者の皆様からの質問コーナーもありました。司会の盛武さんからは、じゅんさいをおいしくいただくためのレシピについて質問がありました。レストランハーベリーでは「じゅんさいティラミス」というデザートもあるそうです。昨年の横浜の三種ファンフェスタでは、「黒蜜じゅんさいきなこ」(湯通ししたじゅんさいに黒蜜ときな粉をかけたデザート)が提供されました(筆者も当日会場でいただきましたが、おいしかったです!)

そのほかにも、天ぷらにして食べるのもおいしいそうです。(昨年のイベントの様子やさくら亭の桜田さんご推薦のレシピはWE LOVE AKITAの記事「みたねファンフェスタ」で世界チャンピオンに会ってきました!」にも掲載されています)

世界じゅんさい摘み採り選手権大会(あきたタウン情報から)

「じゅんさいは栽培できますか?」という質問もありました。三種町の方によると、じゅんさいは本来、天然の沼に生えているものですが、三種町がじゅんさいで有名になったのは、減反政策で田んぼを深く掘ってそこを沼のようにしてそこにじゅんさいを植えた結果、一大生産地になったからだそうです。じゅんさいの沼の深さは40~50センチくらい(膝くらいの深さ、田んぼよりも少し深いくらい)だそうです。

噴き出しそうな質問もありました!「じゅんさい摘み取り体験したいのですが、体重制限はありますか?」

船は二人乗りなので大人2人分くらい、100キロは大丈夫!

現実的な質問も。「じゅんさいはオンラインで取り寄せできますか?」

今年は50年に1度の不作なので難しいですが、通常はお取り寄せ可能です。4月下旬から9月上旬の季節には生でも送ってもらえますし、水煮ならいつでも取り寄せできます。

ただ、来年は是非、最高のものが食べられるツアーを用意するそうなので、それに参加して食べに来てくださいとおっしゃっていました。三種町は、じゅんさい以外にも、夏は、カニ、岩がきなど海産物、メロンやトマトなども魅力です。

最後に、三種町の酒屋、サンクラのご主人、三浦基英さんに、お酒についてご説明いただきました。今回は、3種類の日本酒(鳥海山、秋田犬ラベル、雪の茅舎)をご提供いただきましたが、秋田のお酒で1本推薦するとしたら、雪の茅舎(ゆきのぼうしゃ)を薦めるそうです。NHKの番組「プロフェッショナル」で、雪の茅舎の杜氏さんが紹介された影響もあり、1年くらい入手が困難でした。

秋田犬ラベルの日本酒を作っている蔵は、福乃友(ふくのとも)。三浦さん曰く、「地味ですが純米系のいいお酒を造っているところ」。秋田犬(あきたいぬ)ラベルのお酒は純米吟醸酒で、このラベルは前からあるそうですが、昨今の秋田犬人気で注目度が上がったそうです。

鳥海山というお酒は、山形県との県境にある鳥海山の近くにある天寿酒造のお酒。秋田県は軟水の土地で柔らかい味が得意ですが、今回提供された3つのお酒の地域は中硬水(ちゅうこうすい)で、山廃(やまはい)系、深みのある複雑な味を醸し出しているそうです。秋田県のお酒は、「濃醇旨口(のうじゅんうまくち)」といって旨味の強いのが特徴で、しっかりとした味の地酒が多いそうです。

いい吟醸酒の飲み方としては、まずちょっと冷やして(冷やしすぎは厳禁)飲み、ぬる燗(34度から35度)にして飲み、燗冷ましにして飲む、という楽しみ方がお勧め。山廃系の純米酒は、クリーム系の料理とかパスタ、グラタンにも合い吟醸酒、大吟醸などのきれいなお酒は、さっぱりした食事の最初にアペリティフのように飲むのがお勧めだそうです。三浦さんは、25年間東京で仕事をした後、15年前に家業を継ぐため三種町に戻っていらしたそうです。

三浦さんは高知県馬路村関連の話題として、高知県出身のデザイナー、梅原真(うめばらまこと)先生についてお話されました。梅原先生は、秋田県の名勝をポスターにする仕事の一環として、三種町でじゅんさいのポスターを作られたそうですが、その時、三浦さんは梅原先生のアテンドをされたそうです。梅原先生が日本酒好きだと聞き、三浦さんは秋田の地酒とタニシ(貝の一種)のじゅんさい鍋を用意されたそうです。タニシのじゅんさい鍋はとても手間がかかる料理ですが、先生はとても喜ばれたそうです。

梅原先生のご友人の中には、フランスのパリのレストランでじゅんさい料理を提供しているところがあるそうですが、そこのじゅんさいは中国産。実は世界的には、じゅんさいの産地は中国ということになっているらしい。じゅんさいは元来、中国の薬膳、宮廷料理で、朝鮮半島経由で京の都に伝えられたそうです。中国の故事には、「蓴羹鱸膾(じゅんこうろかい)」という言葉があるそうです。「蓴(じゅん)」はじゅんさい、「ろかい」は魚を意味し、故郷の高級珍味を食べたいために高級官僚をやめて故郷に帰るという、郷愁の歌があるそうです。

浅田次郎の作品「蒼穹の昴」(そうきゅうのすばる)の中に、この故事が出てくるそうです。そのほかにも、蕪村の歌集にも(蓴=ぬなわ=とる小舟にうたはなかりけり)という歌がある通り、昔からじゅんさい採りは重労働だったそうです。万葉集にも、じゅんさいが出てくるとか。

コロナ禍の中で外出自粛が求められ、気分が落ち込む日々が続いていましたが、三種町主催のオンラインイベントで、家に居ながら三種町に旅行したような気分になりました。家族以外の人と話をする機会も減っていますが、全国各地の様々な方々とパソコンの画面を通じて話をすることで、気分転換にもなりました。

じゅんさい、豚肉、お米、メロン、ポン酢、日本酒と三種町選りすぐりの食材はどれもおいしかった!

また、博識の方が多く、大変勉強になりました。秋田県出身でさえも知らないことが多く、故郷の良さを再発見するいい機会となりました。

記事:長谷川綾子・竹内カンナ

写真:長谷川綾子・湯沢晃平