外旭川のイオンは秋田大好きなイオンタウン前社長の夢なので応援します

イオングループの1社であるイオンタウンが8年前から秋田市郊外の外旭川地区で提案している大規模な商業施設の計画があります。

規模としては秋田市の南にある御所野のイオンモールを上回るものになるという壮大な構想です。おそらく秋田市にこんな大きな複合施設の開発計画が持ちあがることは二度とないのではないかと思います。

イオンタウンの進出については、周辺の既存の小売店の存続をおびやかす懸念があります。しかし、イオンがここで作ろうとしているのは、秋田市の中心市街や土崎のセリオンとの連携を考え、共に秋田を盛り上げたいという思いにあふれた計画なのです。

そんなの口先だけでしょうと思われるかもしれません。でも、違うと思います。この計画の中心にいるのが秋田市出身でイオングループのデベロッパー、イオンタウンの社長を務めた大門淳さん(68)(現在はイオン㈱顧問)だからです。この計画は秋田が大好きな大門さんがずっと前から温めてきた、秋田再生への想いを現実にするものです。

ネットで拝借した写真なので解像度低くてすみません(イオンのイベントにて)

外旭川のプロジェクトに関心を持っている人は、大門さんのことをご存知でしょう。しかし、大門さんの秋田に対する深い思いを知る人は、彼の周囲にいるごくわずかな方だけで、多くの人には伝わっていないので、秋田出身でたまたま彼の思いを知ってしまった者としてはがゆくて仕方がないのです。

彼の思いを知る人が増えれば、きっと外旭川プロジェクトを実現させてあげたいという気持ちになる人も増えるに違いないと思い、この応援記事を書くことにしました。

新屋生まれの野球少年

大門さんは、1952年に秋田市新屋に生まれ、大学進学のため上京しました。高校では野球部のキャプテンも務めた文武両道の少年でした。

高校の卒業アルバムを入手!

大学を卒業し、イオンの前身のジャスコに入社、社会人生活の振り出しは秋田駅前のジャスコでした。

それから東京や仙台、大阪への転勤を繰り返しましたが、かなりの時間を秋田で過ごしています。それは、彼の奥さんや2人のお嬢さんたちがずっと秋田にいたからでもあります。そう、大門さんの奥様は秋田市でずっと小学校の先生をしていたので、家族が一緒にいられるのは彼が秋田に赴任している時だけ。

ただ、それは秋田が大好きな大門さんが選んだ家族の形なのです。イオン株式会社の本社は千葉県の幕張なので、今は、大門さんと校長先生まで務めて退職された奥さんは首都圏と秋田の間を、行ったり来たりしながら暮らしているそうです。

こうして全国企業に勤めながらも大門さんの心はいつも秋田にあったのです。外旭川に自らが思い描く複合施設を作りたいという思いはかなり以前からお持ちだったようです。
そうして、満を持して今の外旭川の計画を発表したのは2012年、今から9年前になります。

それぞれができる形で秋田に貢献する・・・ 大門さんの場合は、秋田市の郊外に秋田の自然や文化の魅力をたくさんの人に伝え最高のシェフによって秋田の農産物を料理し、秋田のあちこちのおいしい地酒が飲め、工芸品やアートに触れることができ、さらには高齢化が進み、がん死が多い、自殺が多い、といった課題の解決に取り組む活動の拠点となる場所を作ることでした。

この計画には、高齢化が加速度的に進む秋田の先行きを案じ、経済に活力を与えたいと願う1人の秋田県出身者の熱い思いが込められているのです。

秋田市中心市街の未来

そんな大きなものが、人口が減少する秋田市に出来たら、ただでも人出が減っている秋田駅西側の中心街からさらに人影が消えてしまうという見方は、おそらく多くの人に共通していると思います。穂積志市長も中心市街地の活性化に逆行するとしてゴーサインを出さず長い歳月が流れました。

確かに秋田市は中心市街地の活性化に努力してきました。このところ、ぽつりぽつりとおしゃれな飲食店ができたり、リノベした古いビルに若い起業家が入居したり、仲小路にマルシェが立ったりと少し息を吹き返した感もあります。

しかし、今年になって、西武秋田店の地下の高級スーパーの「ザ・ガーデン」が撤退し、西武の3階が閉鎖され、1,2階に入るブランドもだんだん数が減り、駐車場ばかりが目立つ中心市街。

昭和30年代~50年代にかけては、駅前や広小路、大町・川反にかけて、多くの商業施設や個人商店が軒を連ねていました。

欲しいものが売っていて、見て歩いているだけで楽しかったり、非日常の時間を感じられる場所でした。子どもにとっては木内デパートの3階のゲームセンターやレストランのソフトクリーム、屋上の遊具はあこがれでした。

1973年6月 県民会館の土手から撮影した広小路の賑わい(出所:ブログ「20世紀の秘密基地」から)

そう、あの頃、中心市街はおしゃれで活気にあふれていました。お店がいっぱいあって、家族連れで週末にお買い物をしながら子供を遊ばせる場所でした。食料品の買い出しだって、まだ近所にスーパーがなかったから、丸三まで行っていました。

今、家族で出かけるのは御所野、食料品は近所の大きな駐車場のあるスーパー。秋田では家族で出かけるのも食料品の買い物もです。中心市街にも駐車場はたくさんできましたが、2000~3000円の買い物でようやく駐車場がただになるといったサービスでは庶民は行かないのです。

その上、中心市街にあった市役所裁判所赤十字病院などが、ひとつまた一つと移転していき、それとともに、そこに行く人や通う人が使っていた喫茶店やレストランも消えて、さらには世代交代によって個人商店も次々と廃業していきました。人が来ないからお店が消える、お店が消えるから人がますます来なくなる・・・

御所野のイオンモール秋田(出所:イオンモール秋田HP)

皮肉なことに今、中心市街には駐車場ばかりが目立っています。駐車場というのは、都会では大型のビルやマンションができるまでの一時的なものが多いのですが、秋田の駐車場のオーナーは、駐車場の収入で満足しているのか、再開発の話を持ち掛けても乗って来ないのだそうです。

この地域を復活させることもできなくはないでしょう。でも、一軒一軒のテナント料を軽減してポツリポツリと店舗を出したい人が現れるのを待つというのではどうでしょうか。出店しても軽減措置のなくなるころに撤退することの繰り返しです。いつまでたっても種火が大きな炎になることはなさそう。そもそも、軽減措置のある間だけのつもりで店を開く業者も多いとも聞きました。

個人的にはバスとJRが主な交通手段である運転免許や車を持たない若者や高齢者と、この20年の間に急増した徒歩圏内のマンションの住人たちに魅力を感じてもらえるようなあらゆる種類の店舗を一気に出店するような大胆な施策が必要なのではないかと思います。

あるいは、店舗を増やすことは諦め、現存する商業施設はアーケードのある駅前に集積させ、それ以外の地域は公園にしたり、小学生から高齢者までが学んだり学校の垣根を越えた活動をする場所、コンサートやライブが頻繁に行われ、展覧会が開催される文化の中心地、または大人が自分磨きをしたり、あるいは興味がおもくままに学べる生涯学習の拠点にしてはどうでしょうか。

外旭川開発が合理的な理由

イオンが確保した外旭川の地域。隣接する中央卸売市場の老朽化に伴う建て替えとの連携、秋田のプロサッカーチーム、ブラウブリッツ秋田のスタジアム建設、秋田市が名乗りを挙げることを検討している国のスーパーシティ構想への戦略特区の建設用地としてこの場所が最も現実的だという意見が優勢になっています。

Google Street View から

ブラウブリッツのスタジアム

ブラウブリッツのスタジアムについては、八橋陸上競技場など他に3カ所の候補地があります。しかし、岩瀬浩介社長が過去のインタビューで、陸上競技場でサッカーを見ると遠すぎて熱気が伝わらないのを感じたとおっしゃっていたのが忘れられません。VIPと一緒に試合を見た時、選手のやる気が感じられず、試合後に選手を叱った後で、映像で試合を見直して、それが決して選手のせいではなくVIP席が選手たちから遠かったことによるものだと気付き「はっ」としたのだそうです。

岩瀬社長は、サッカー専用のスタジアムが欲しいが、それを市民が他の用途にも活用できるようにして少しでも収益を上げたいと語っておられました。新スタジアム建設の署名運動をしたら18万人も集まったそうです。そのお陰で陸上競技場に大きなディスプレーを設置できたのですが、2020年シーズンに28戦負けなしというJリーグ史上初の快挙でJ3優勝を果たしJ2に昇格し、さらにJ1を目指して頑張っているブラウブリッツのためにサッカーのスタジアムをプレゼントしてあげたいとは思いませんか?J2でも活躍が続けば来秋するサッカーファンたちも増え、それによる経済効果も期待できます。

岩瀬社長は、自ら退路を断つかのように2025年に新スタジアム完成と表明しています。逆算すると2022年には予算化が必要ということになります。来年ですよね。まあ、岩瀬社長としては2025年に着工できれば実現だと考えているそうです。

外旭川の開発構想について、穂積市長は今年初めに、条件付き賛成に転じて、開発事業者からの提案公募を9月末に始めるとしていたのですが、議会から市長の描く構想が卸売市場の姿が明確でないとの批判を受け、卸売市場の基本構想がまとまる2023年3月以降に延期するとことも検討すると述べ、大幅な延期の可能性が浮上しています。

この構想は単なるショッピングセンターではありません。いわば「オール秋田」のテーマパークの建設です。そして個人的には諸般の事情を考えると通常のショッピングセンター構想のように長く環境が整うのを待つのは難しいと思っています。タイミングも大事です。

オール秋田のテーマパーク

改めて強調させてください。この構想は秋田のすべてが体感でき、秋田のさまざまな社会課題に対処することを目指したテーマパークなのです。

県外からの観光客の数が47都道府県の中で最下位に近く高齢化に加え、若者の秋田離れが進み、加速度的に人口が減るといわれる秋田。がんや循環器系の病気で早く亡くなる人が多いため平均寿命がとても短かったりもする秋田。地元に住む人々の間にはそうした秋田の課題に対して無力感が漂っています。でも、実は秋田を離れた人の中には、秋田在住の人たちよりもそうした状況を憂慮している人が多いのです。

この構想が明らかになったとき、多くの疑問の声が出たようです。人口減少の秋田にこれ以上大きな商業施設はいらない。もし追加的に建設されれば、秋田市中心地の人影がさらに薄くなり寂しくなる上、イオンの店舗も想定ほどの収益を上げられず、そのうち撤退するだろうという声が大勢でした。

また2000人の雇用を生み出すかもしれませんが、多くは非正規雇用で、その仕事のために都会から秋田市にAターンする人材が増えるとは思えない、そうだとすると中心地の店舗で働く人がイオンに流れ、駅前の店舗が人手不足で潰れるかもという懸念もあったようです。

しかし、それって製造業の誘致でも同じではないですか?市や県は、中央の製造業やIT企業の誘致が成功すると大々的に記者会見をしますが、雇用されるのは数十人、数人のときもあります。もちろん、市や県が重視しているのはプロフェッショナルな人材を正規雇用する給料の高い産業で、大都市で働いている人が帰郷して、そのままの給与水準で働ける会社。そうした産業が秋田県がさらに振興しなければならない重要な産業であることは確かです。でも、イオンは大きいだけにいろんな職種があり、ここで働けるならと大都市から戻ってくる人もたくさんいると思います。「製造業やIT業は鳴り物入りで歓迎されるのになぜイオンは敵視されるのか」と、ある首都圏在住の秋田市出身者が首をかしげていました。

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最後にまた繰り返させていただきますが、この提案は秋田大好きな大門さんの夢が詰まった「オール秋田」のテーマパークの建設です。広大な敷地には、国内外から観光客を呼べるような秋田の味・観光・文化体験ゾーン、子どもがさまざまな体験ができる施設や若者も大人も楽しめるスポーツやエンターテイメント施設、県民の健康増進のための取り組みの拠点となるウェルネスゾーン、先進的な農業のための実験的施設、高齢者が多世代で交流しながら生活をエンジョイできるCCRCゾーンなどを設けようと考えているのです。遠くからでも訪れたいと思うような有名シェフのレストランも引っ張ってくるそうです。

どんどん提案してみよう!

計画の内容はほとんど固まっていないようです。2017年に大門さんのインタビューをさせていただいた時、秋田の現状を憂い、状況を少しでも改善したいという熱意を感じ、だったらその計画にできるだけ多くの秋田県民のアイデアを盛り込んで多くの人のためになる施設にしてもらいたいと思い、計画の成り行きを見守って行こうと決意しました。

その後、民間からも行政からも様々な提案があり、大門さんたちはそうした意見に丁寧に耳を傾けてきました。そのため提案の内容は大きく変遷しましたし、これからも変わっていくと思います。

せっかくですから、みんなで秋田のこれを紹介したい、こういうものを作れば秋田の課題の解決につながるのでは・・という提案をどんどんイオンにぶつけ、さまざまな知恵を盛り込んだオール秋田の施設を作ってもらいませんか?いいチャンスだと思います。

文:竹内カンナ