「みたねファンフェスタ」で世界チャンピオンに会ってきました!

真夏のような日差し(最高気温は28℃!)がまぶしい6月16日、横浜市内のプレジャーホール(ボクシングジム兼貸スタジオ)で、秋田県三種町の「みたねファンフェスタ第2弾」が開催されました。

ボクシングジムで開催された理由は、このイベントのゲストが三浦隆司さん(プロボクシング元WBC世界スーパーフェザー級王者で、秋田県三種町出身)だったからです。三浦さんは2013年に世界チャンピオンになった、ネットでは「天才」と称賛する声もあるすごい選手です。2017年には秋田県体育協会の「テクニカルアドバイザー」に就任し、小中学生を中心に秋田のボクシングの底上げを図るために、ご尽力されています。現在は、地元の三種町でご家族と一緒に暮らしています。

ボクシングファン、三浦ファン、三種ファンを中心におそらく40~50人くらいが集まりました。イベントは2部構成(前半が三浦さんのトークショー、後半がジュンサイ料理を食べながらの交流会)で、司会進行は、三浦さんと金足農業高校3年間同じクラスだったお笑いコンビ「ねじ」さんでした。「ねじ」さんは、ササキユーキさんとせじもさんのお二人のコンビで、ササキユーキさんは一時期、三浦さんと同じボクシング部に所属していたそうです。

でも、ササキさんが「高校の時のぼくらの印象ってありますか?」と敬語で聞くと、三浦さんは「う~ん」って困ったように笑って「あの~せじもくんはラグビー部だったんで自分の仲間とかとも付き合いがあったんですが~~」と、ボクシング部だったササキさんの記憶はまったくないようす。ササキさん、WE LOVE AKITAのインタビューでは、ボクシング部で「けっこういい線いっていた」って話していたんですけどね。(笑) よく聞くと、三浦選手は入学当初から他の部員とは全然別メニューの練習をしていたのだそうです。

せじもさんによると、「自分たちはまだ将来どうなるのかがさっぱり分からなかったとき、三浦さんは一つステージが上の人、先が見えているというか、大人な印象だった」そうです。

同級生ながらこの3人が会うのは卒業以来はじめて。でも、格闘技好きなササキさんは数年前にプロレスを見に後楽園ホールに行った時、そこに三浦選手の写真が飾ってあって、「同級生の写真があるなんて衝撃でしょ? そうなんだ、そんなにすげえんだ・・・」と驚いたことがあったそうです。

三浦さんも昨年の夏、甲子園で金農フィーバーが起きた時、テレビで取材されたねじの二人を偶然見て、「おう、金農のジャージ着てる!頑張ってるな!」と思ったそうです。

これがチャンピオンベルトだ!

三浦さんはチャンピオンベルトを会場に持ってきて下さいました。水色の極太のベルトに金色の円盤が入っていて、その中に各国の国旗が円形に細かく並べられ、中心にWBCのロゴがありました。初めてチャンピオンベルトというものを見ましたが思った以上に大きく迫力がありました。

印象に残った試合は?という質問に、三浦さんは初めて世界チャンピオンになった試合ミゲル・ローマン戦の2つを挙げられました。世界チャンピオンになった試合は、「出すパンチがすべて当たり、相手が倒れたという感じ」で「感覚も鋭くて神様が下りてきたようだった」と話しました。

世界一になった時の感想を聞かれると、「まず、勝ったー!と思って、それからこれで終わりじゃない、防衛しなければならない、新しい人が挑戦してくる」と思ったそうです。(冷静でいながらハングリー精神にあふれている!!)

ミゲル・ローマン戦は、チャンピオンの座を失い、もう一度這い上がるための「再起を誓った大事な試合」だったそうです。全体的には劣勢だったけど、最後にボディへの一発が決まり勝利した戦いで、三浦さんの中では理想とする「豪快な倒し方」ができた試合として印象に残っているそうです。ササキさんは、「またチャンピオンになるためチャレンジしようというのがすごい!自分だったら一回なったんだからいいやって思ってしまう」と感心していました。

続いて、その試合の様子をリング上で再現しようという趣向で、恐れおののくせじもさんが元チャンピオンの相手役を務めました。(もちろんほんとにパンチはしていないです。死んじゃいますから)

せじもさんの怖そうな顔!

三浦さんのパンチを、分厚いミットで受ける「ミット打ち」もすごい迫力でした。最初、せじもさんが受けて、その後、会場のボクシングファンがリングに上ってミットを持ったのですが、せじもさんがミットを持っていたときはパフパフという音だったのが、ボクサーが受けるとバシ~ンと爽快な音が響き渡りました。

三浦さんがボクシングをやりたいと思うようになったきっかけは、小学校の低学年の時、テレビで見た日本チャンピオンだった叔父さんの試合でした。

ボクシングをやっていて楽しいと思う瞬間は、試合に勝った日の夜。減量から解放され、好きなものが食べられる時だそうです。「その瞬間はボクシングを頑張っていたから得られるものだし、試合に勝つと、それまでと同じ景色が輝いて見える」とおっしゃっておられました。

会場から、「試合中に解説者が『三浦選手のパワーの源は、秋田の米だ~』と叫んでいたことがありましたが、本当ですか?」という質問が出ました。これに対し、三浦さんは「米は本当によく食べています。海外にも持参しています」と答えられ、三浦さんが故郷の秋田を大切に思っていることが伝わってきました。

イベントの後半では、三種町が誇るジュンサイ料理が二品(カレー風のジュンサイスープと黒蜜ジュンサイきなこ)が、ふるまわれました。

春雨と鳥団子が入ったカレー風ジュンサイスープ。(写真が暗くてすいません!)

ジュンサイというと酢の物やお吸い物と思っていましたが、カレー風のジュンサイスープは春雨と鳥団子も入り、食べてみると、ジュンサイのヌルっとした食感と春雨のツルっとした食感がスープとよく絡んで美味でした。作り方は、お鍋に具材(ウィンナー、鶏肉、豚肉など)とコンソメを入れて、カレー粉を加え、お好みの味に調え、最後にジュンサイを入れるそうです。カレー粉がない場合は、カレールーでもよいとか。意外なことに、ジュンサイは、油やバターとの相性もよいそうです。その上、天ぷらも天ぷらもおいしいらしい。ジュンサイ料理を作ってくださった「さくら亭」の桜田澄子(すみこ)さんによると、中華風のコーンスープに入れてもおいしいということでした。

「黒蜜ジュンサイきなこ」は、その名の通り、黒蜜、ジュンサイ、きなこ、そしてアイスクリームを合わせたデザート。ジュンサイは葛切りのような味わいで、黒蜜やアイスクリームとよく合っていました。こちらも意外な組み合わせがおいしかったです。

三種町役場の方によると、今年は少雨による水不足のため、ジュンサイの生産にも影響が出ているということです。また、以前は、「生ジュンサイ」か「水煮・酢漬けジュンサイ」として出荷されていたジュンサイ、今では技術の進歩により、冷凍保存もできるようになりました。

三種町では、5月から8月にかけてジュンサイ摘み取り体験もできるそうです。あの小さな箱船にのって沼でジュンサイを摘み取る体験、ちょっとやってみたくないですか?夏場にかけて三種町方面での観光を計画される方は、ジュンサイ摘み取り是非お試しあれ。

後半は、三浦さんが三種町暮らしについて語られました。三種町に帰ってよかったなと思えるところについては、「子供が伸び伸びと育てられる、それほど子供に付き添わなくてもよい、危険を感じることなく育てられる」ところを挙げておられました。三種町に帰った理由について聞かれると、「試合が終わると三種町に帰って休んでいました。帰ると落ち着くんですね。ここが自分の居場所だなと常に感じていたので、引退したら三種町に戻りたいなと思っていました」と、帰郷がごく自然な成り行きだったようです。

今は体育協会に所属し、高校生、小中学生にボクシングを教えています。高校は金足農業高校(かなのう)や中央高校。小中学校に日替わりで回って指導しています。スポーツ科学センターにはリングがなかったのですが、「皆さんの協力のおかげでリングができました」と嬉しそうに話しておられました。(元チャンピオンから指導を受けるなんて、贅沢な教室ですね。ボクシングファンも増えそうです)

最後に、司会進行を務められた「ねじ」さんがコントを披露されました。タイトルは「楽しい秋田弁講座」。タッチ、ガンダム、アルプスの少女ハイジの名シーンを早口の秋田弁で演じ、大爆笑を誘っていました。早口で意味の分からないところもありましたが、標準語と秋田弁を比較しながら同じ内容の会話を聞いてみると、自分の故郷である秋田の方言が外国語のように感じられて新鮮でした。

「ねじ」さんは、今年の9月と10月の2ヵ月間に、東京での活動をいったん中止して、秋田県に住み、秋田のイベントなら何でも無料で出演されるそうです。(無料で出演されるなんて、すごいですね。太っ腹です!!)

これからも秋田弁を使ったネタを含め、もっといろんな方面でもネタを広げてどんどん活躍してほしいと思いました。

三浦ファンを三種ファンに」とのスローガンで開催された「みたねファンフェスタ」は、三浦さんの華麗な身のこなしを見て良し、お笑い芸人「ねじ」さんのコントを見て良し、おいしいジュンサイ料理を食べて良し、と三方良しの大満足イベントでした。今回のイベント、9月か10月に開催される三浦チャンピオンと焼肉を食べる会、ジュンサイ摘み取り体験をきっかけに、三種町に興味を持つ方がどんどん増えていけばよいなと思いました。

三種町の町おこし協力隊員の湯沢晃平さんは、三種町を「ボクシングのまち」にしようと活動しています。全国からボクシング部の合宿を誘致したり、「三浦隆司カップ」大会を開催したり、町民の健康増進にボクササイズを広めたりと夢は広がるのですが、今はリングがない!!

そこでまずは若者が集まって「TEAMボンバーレフト」を結成し、クラウドファンディングでリングを作ろうと計画しているそうです。ボンバーレフトは三浦選手の別名です。

9月か10月には地元で三浦チャンピオンと焼肉を食べる会を企画中だそうです。こちらにはいかにも肉好きが多そうなボクシングファンが大挙して参加しそう!

三種町のあれこれやこうした活動についてはフェイスブックページ「みたねファンステ」で随時お知らせしているそうですので、是非フォローしてください。

 

文・写真:長谷川綾子・竹内カンナ