【寄稿】ロカとも友の会(前編) 地方のおいしいものをオンラインイベントでも

新型コロナウイルス、とんでもないやつです。わいわいがやがやすることが大好きな世界中の人間をしゅんとさせて、もう半年以上。しかも、いまだに収束への見通しが立ちません。この数年、WE LOVE AKITAのメンバーが参加したりレポートしてきたいわゆる「移住イベント」も、すべて中止になりました!

ただ、そうした環境の中で、しかたなく始まったオンラインのイベント、時とともに新たな集いの形としてどんどん充実。以前は場の空気を共有することが大事なんだとリアルのイベントにこだわっていた人たちも、移動の時間が不要でどこからでも参加できるオンラインのメリットに目覚め、浸透してきました。

でも、何か物足りません。だって地域の移住イベントは、おいしい地酒を試飲したり、名産を試食したりというのが楽しみなのに、オンラインイベントではそれができない。パソコン画面の向こうでおいしいものが紹介されたりすると、その残念さはさらに募ります。

昨年(2019年)、秋田の関係人口を増やす活動を立ち上げ、秋田と東京で次々とイベントや現地ツアーを企画していた「チームババヘラ」の共同代表の3人もそうでした。

左からチームババヘラ共同代表の小松由さん、白井圭さん、菅野秀和さん

しかし、彼らはリアルなイベントが難しくなると、迷うことなくオンラインに移行、地域の名産をネコポスやクリックポスト便、宅配便で参加者に送り、それぞれの家でパソコンやスマホの前でわいわいやりながら地域の特産品を一緒に飲み食いする紹介制オンラインイベント「ロカとも」を立ち上げました。

3人は、ロカとものほか、羽後町の地域課題と取り組む「おむすびとプロジェクト」にも主要メンバーとして関わっています。小松さんは横手市出身で、本業は民間企業の人事(組織開発担当)として全社のMission、Value推進を行っています。おばあさんが羽後町に住んでおり、先日白寿を迎えたそうです。白井さんは秋田市出身で、大手システムインテグレーターの研修会社で研修の販促、実施の進行管理を担っており、これを「ロカとも」や「おむすびと」のようなプロボノのプロジェクトに生かしています。12月には週末の3日間でアイデアを形にする方法論を学び、起業を体験するイベント「Startup Weekend 秋田」のオーガナイザーとして参画する予定。菅野さんは、福島県郡山市出身。本業で全国の自治体における人口減少や関係人口創出に関するプロジェクトに携わっていて、秋田県では羽後町のNPO法人みらいの学校と連携して関係人口の育成や創出に取り組み、大手ビールメーカーとのクロス企画や「おむすびとプロジェクト」などを手掛けています。

前編では、このあと菅野さんに、チームババヘラとは・・と秋田県以外の「ロカとも」の開催で、各地域にどのような形で貢献しようとしているかを、イベントの解説とともに紹介していただきます。

では、菅野さん、お願いします!

■チームババヘラについて

私たちチームババヘラは秋田県の関係人口を「かだる(語る)人口」と定義し、一緒にかだる・参加する人を増やすことを目的としています。2019年は東京と秋田でMEET UPイベントの開催、地域との関わりしろを見つけるツアーを実施、秋田魁新報の特集「つながる力」やABSラジオ「まちなかSESSIONエキマイク」に出演しました。

しかし、2020年になり状況は一変しました。新型コロナウィルス感染症拡大により私たちの活動も一時期は自粛せざる得なくなりました。しかし、地域に旅行に行ったり、地域の方と会ってお話しする機会が減ってしまったもどかしさを何とかできないかと考え、オンライン会議システムを活用して始めたのが「ロカとも」でした。

■ロカともとは・・・

オンラインでも地域のストーリー性のある食べ物であったり、ゲストの生産者さんが携わっていること「おとも」に、みんなで一緒に食べながら飲みながら地域の方たちとフラインのようなイべントのワクワクを共有し、さらに参加した方たち同志が友だちになれたら最高だと思ってはじめた紹介制オンラインイベントです。

ロカともは、地域のおいしい「おとも」が家に送られてくるワクワク感を大切にしながら、これまで月2回開催のペースで9回開催してきました。

 まず、5月15日にFacebookの非公開グループ「ロカとも友の会」(以下、「友の会」)を立ち上げました。「友の会」への参加は、メンバーからの紹介を条件にしています。なぜ、紹介制としたのか。それは、オンライン上の不特定多数の方を対象とするのではなく、誰かに紹介された人に限定することで、安心して参加でき、仲良くなりやすい環境をつくりたいと考えたからです。

各都道府県をモチーフにしたロカとものバッジ。秋田県はどこにあるかな?参加するともらえます

「友の会」には、地域の方(公務員、生産者、ソーシャルセクターの方)、首都圏で地域に興味がある方、地域とつながりたい方、地域のおいしいものが好きな方、地域の課題を解決したい方、コロナ収束後に旅に行きたい方、オンライン飲み会が好きな方などが参加しています。

10月21日現在でメンバーは88人。「ロカとも」を続けてきたことによって、一度も直接お会いしたことがないのに以前からの知り合いのような関係性を構築することができました。

また、メンバーたちが自発的に「部活」を立ち上げ、「ロカともオリジナル商品」を開発するなど、コロナ禍においてオンラインを活用した地域の事業者・生産者との新しい関わり方が生まれようとしています。

「ロカとも」では、地域の特産品を食べて感想を共有するだけでなく、その地域を、より良く知っていただくために地域の事業者・生産者さんやまちづくりに取り組んでいる方を「ゲスト」にお招きして、取り組んでいることや課題についてお話しいただいています。そして、その課題について参加者のみなさんと考えてアイデアを発散します。ストの方にも「ロカとも」を通じてお持ち帰りいただける「お土産」を提供するのが狙いです。

■これまでの開催実績と地域へのフィードバック

5月25日に第1回目の秋田県羽後町の「ロカとも」を開催してから、福島県白河市・沖縄県沖縄市・宮城県南三陸町・奈良県吉野町など、また、秋田県では八峰町・潟上市・能代市にフォーカスして開催してきました。

開催地は運営メンバーのつながりのある地域をはじめとして、「友の会」のメンバーからも月2回のペースではご期待に応えることができないくらいの地域のご紹介をいただいています。

前編は、秋田県外の「ロカとも」がどのようなテーマで開催され、ゲストの方にどのようなフィードバックをしてきたのかをご紹介いたします。後編では秋田出身の小松由さん・白井圭さんから秋田で開催した時の取り組みをご紹介させていきます。いずれの回も高橋朋子さんにすばらしいグラレコでまとめていただきました。

■テーマ別事例紹介

テーマ1:新商品販売前のテストマーケティング

ロカともvol.3@福島県白河市

◆ゲスト:山口こうじ店  山口 和真さん

3回目のロカとも@福島県白河市では、創業明治6年の老舗麹屋である「山口こうじ店」の山口和真さんをゲストにお招きし、「のむ点滴」として注目されている甘酒や原料となるとなる麹について山口さんにお話しいただきました。

おともは、3種類の甘酒から1種類を選択、新商品の甘酒、三升漬け、聖護院かぶの味噌漬け。また、新商品である「かぼちゃ甘酒」は参加者にシークレット商品として送付し、イベント内でテストマーケティングを兼ねた試飲をしました。その後、「かぼちゃ甘酒」は一部改良され商品化されました。

このイベントを受けて、山口こうじ店ご協力のもと「ロカとも甘酒部」という分科会が立ち上がり、現在部員20人で「ロカともオリジナル甘酒」を開発中です。

@高橋朋子

テーマ2:観光地以外の沖縄の楽しみについてのアイデア

ロカともvol.4@沖縄県沖縄市

◆ゲスト:Agean(エイジアン)合同会社 伊藤 憲翔(けんしょう)さん

第4回目は沖縄の風スペシャルと称して白井さんの知人である元糸満市観光協会の伊藤さんをゲストにお招きし、沖縄での取り組み地元の方がおススメする沖縄の楽しみ方などをお話しいただきました。

また、伝統芸能である沖縄民謡についての説明の後、三線を演奏して実際に歌っていただきました。歌をただ聴くだけではなくて歌の意味をしっかりとインプットした上で聴くのはとても貴重な体験でした。

最後に沖縄のお祝いの席で踊る「カチャーシー」をみんなで踊り、まさに沖縄の風を感じるひとときでした。おともは黒糖、オリオンビアナッツ、ミミガージャーキー、ポークジャーキー、35コーヒー、伊江島ピーナッツをお届けしました。

@高橋朋子

テーマ3:商品プロモーションと新しいかまぼこのアイデア

ロカともvol.5@宮城県南三陸町

◆ゲスト:及善蒲鉾店 及川 善弥さん

第5回目の「ロカとも」では、日本一魚肉タンパク質を愛する男による「旅するかまぼこ」スペシャル!と題して、宮城県南三陸町で常温でも持ち運びのできるかまぼこを開発した及川善弥さんをゲストにお招きして開催しました。なぜ、常温保存できるかまぼこを開発しようとしたのか。また、及川さんが現在注力している新しいたんぱく質の開発についてお話しいただきました。おともには、旅するかまぼこをお届けしました。

@高橋朋子

テーマ4:「柿の葉すし」認知度向上のためのアイデア

ロカともvol.6@奈良県吉野町

◆ゲスト:柿の葉すし「ひょうたろう」 水本 幸太郎さん

吉野の‟ハレ”の日のご馳走「柿の葉すし」スペシャル!と題して、伝統にプラスして新しい技術やプロモーションを積極的に導入する水本幸太郎さんをゲストにお招きして開催しました。

水本さんが都内大手企業からUターンして家業を継いで感じたことや、その経験を活かして具体的にどのような取り組みを行っているのかお話しいただきました。

まずはグループワークで「柿の葉すしの知名度をあげるためにはどうするか?」をテーマに語り合い、手巻き寿司キットや柿の葉に包まれていて中身が分からないことを活かしてロシアンルーレット風にするなど様々な視点からアイデアが発散されました。おともには作った翌日が一番おいしいと言われる柿の葉すし(鮭・鯖)をお届けしました。

@高橋朋子

テーマ5:オンライン見学会のノウハウと感想共有

ロカともvol.8@福島県白河市

◆ゲスト:山口こうじ店 山口 和真さん

第3回目にて甘酒についてお話しいただいた山口こうじ店さんに再度ご登場いただき、あなたの知らない山口こうじ店の味噌蔵の世界と題して門外不出の味噌蔵からオンライン見学会を開催しました。

普段立ち入ることができない環境ということもあり、参加者のみなさんから多数ご質問やご意見が飛び出しました。おともには、全国味噌品評会で3回理事長賞を受賞した白河の関の味噌、ずんだ味噌、塩麹、ヤーコンの味噌漬けをお届けしました。

@高橋朋子

前編のまとめ

前編では、秋田県外で開催した事例を中心に、ご協力いただいたゲストに対してどのようなフィードバックできたのかをご紹介いたしました。

これまで私たちチームババヘラが「かだる人口」を増やすため取り組んできたことが「ロカとも」のベースとなっています。

チームババヘラは、秋田を語る人と、その想いに共感して仲間に加わる人たちがつながり、秋田の可能性を面白がってくれる皆さんの共感の輪がどんどん広がって、それぞれのありたい姿を実現できるよう、集い・つながり・つくるということを目指しています。

そして、コロナをきっかけに始まった「ロカとも」でも「みんなで一緒に食べる楽しさ、みんなが友だちになれる地域とオンラインのつながり」をコンセプトに、コロナ後もこの地域との新しい関わり方をさらに多くの地域で展開していきたいと思います。

後編は、いよいよ秋田県での開催事例を中心に小松さん・白井さんに「かだって」いただきます。

文・画像:菅野 秀和(チームババヘラ)

編集:竹内 カンナ

チームババヘラ

 

 

 

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