湯沢市にある秋田県醗酵工業をオンラインで取材させていただきました。焼酎、清酒やサワーなどビールを除くさまざまなお酒を製造しています。2020年春にコロナ禍で消毒用アルコールが不足した時には、高濃度エタノールを県内の医療機関に無償で供給して話題になりました。
商品開発に秋田の名産品を積極的に使ったり、斬新な発想を取り入れたいとして女性チームに商品開発を任せるなどの取り組みのお話に加え、海外販売の拡大など面白いお話をいろいろお聞きすることが出来ました!
秋田県醗酵工業の生産する日本酒としては「一滴千両」が有名ですが、同社の名前が秋田県全域に鳴り響いているのは、焼酎の「そふと新光」です。秋田は日本酒の名産地なこともあって焼酎はややマイナーな存在ではありますが、そふと新光は、秋田で最も親しまれている焼酎です。
秋田ゆかりの食材を使った商品開発
藤武哲朗社長は、「私どもの会社には、秋田で育てていただいた商品が多いですよ。秋田の湯沢発ということにこだわりを持って、秋田にゆかりのものを利用して開発しています」とさすが社名に秋田県がつくだけあって秋田への愛にあふれています。
同社は、戦後、県内の有力酒造業者と酒類販売業者によって「秋田県酒類製造株式会社」という社名で湯沢市に設立され、半年後に高清水を造っている秋田酒類製造と紛らわしいとして「秋田県醗酵工業」に社名を変更しました。その後、資本提携した会社が東証一部上場のオエノンホールディングスの傘下に入ったため、現在はオエノングループのメンバーです。
実は、藤武社長は佐賀県のご出身。北海道の大学を卒業後、オエノンに入社、北海道から九州まで日本列島を股に掛けたビジネスマン。湯沢に住んで6年、「会社の前の雄物川に白鳥が100羽ぐらい来るんですよ」と嬉しそうに話していらっしゃいました。
秋田の特産を生かした商品開発では昨年(2021年)、秋田県総合食品研究センター(総食研)、秋田県立大学、秋田高専と共同開発した秋田杉の葉を使ったクラフトジン「秋田杉GIN」が東京ウイスキー&スピリッツコンペティション(TWSC)という国内の洋酒コンテストで最高金賞を受賞しました。
藤武社長は、「産官学で1年かけて開発した商品で、杉の香りもよく出ていて味わいも豊かです。最高金賞を頂いたのを機に今後大きく育てていきたいと思っています」と、この新たなジンにかける意気込みを語られました。
秋田サワーは女性チームが開発
女性が生き生きと働ける職場作りにも心を配られ、2019年に発売したご当地チューハイ「秋田サワー」の開発には、同社として初めて女性のプロジェクトチーム「A-ribbon」を結成しました。宣伝活動のためテレビやラジオにも出演したそうです!
秋田サワーは、焼酎に秋田の果実や野菜、加工品を入れたサワーで、商品として男鹿半島の塩を使った「塩レモン」、「リンゴ」、「メロン」の3種類があり、同社のホームページをみると、はちみつレモンや甘酢に漬けたプチトマトを入れたオリジナルな飲み方が紹介してあります。さらに、手軽に秋田サワーを楽しめる秋田サワーの素や缶入りチューハイも造っています。ラベルは迫力のあるナマハゲがにらみを利かせ、インパクトがあります。
女性チームは、秋田杉のジンのデザインにも参加しました。女性の意見によって斬新なデザインやネーミングが生まれたそうです。
同社は女性比率が約3割程度。特に製品を詰める作業や総務などの部署に女性が多いとのことですが、女性が活躍する場は徐々に広がっているようです。過去3年の女性の育児休暇取得率は100%、短時間勤務制度はもちろんですが、子どもの看護休暇制度や介護休業制度など女性が働きやすい環境が整っています。
輸出が拡大
今後の見通しについてお聞きすると、藤武社長は、「従業員に長くこの会社で働いてもらうこと、さらに繁栄させることが私の役目だと思っています。そのためにはやはり地域に根差した商品を開発し、地元の人に飲んでいただけるようでなければいけません。そふと新光のようなブランド力のある商品をいくつも生み育てていきたい。秋田杉のジンや秋田サワーも皆さんに愛されるブランドに育てたいと思っています」と語られました。
最近は、輸出が非常に伸びているそうです。「清酒を中国に輸出させていただいていますが、予想の何倍も売れています。まだまだ伸びていきそうです。これはすごく楽しみです。清酒以外にもジンが世界的なブームになっていますので秋田杉のジンも輸出を視野に入れてやっていこうと考えております」とおっしゃっていました。こうした貿易業務の仕事に興味ある方にも同社が魅力的になってきたようです。
やる気のある人を求む
リーダー研修などについては、親会社のオエノングループが傘下企業の社員全体に各階層で行う仕組みになっていて教育制度が充実しているのも同社の特徴だそうです。
同社に就職される方は地元の高校を卒業した方が多いですが、県外から来る人もおり、2022年春入社の方々の中にもいらっしゃるそうです。既卒者も採用しています。ただし、いわゆる第二新卒といわれる卒業後3年程度までとしています。
来年度は、酒造りや新商品開発を行う製造職、卸会社に対する営業活動や新商品の提案などを行う営業職、経理や総務などの事務職を募集しています。
若手でも実力しだいで活躍できそうです。同社の清酒造りを主導する杜氏は、2019年に弱冠40歳で就任し、初めて造った一滴千両で全国新酒鑑評会の金賞を受賞したそうです。
どんな人材を求めているかとお聞きすると、藤武社長は、「やっぱりやる気が大事ですね。やる気があれば、いろんなことを学んでいってくれるので。今はコロナ禍で集まって飲むことが悪いことのように思われる傾向がありますが、お酒を飲むことの楽しさだとか、例えばこのお刺身を食べる時にはこのお酒を飲んだらおいしいといったことを伝えていきたいと思っています。そういうことを一緒にやれる人に来てほしいと思います」と語られました。実際に現場を見てもらうため職場見学は随時受け付けています。
同社のホームページには、商品であるお酒だけでなく、どんな秋田の名産品と相性がいいかといったことが紹介されており、お酒を通じて秋田を盛り上げたいという思いがあふれています。
最後に就活生へのメッセージをお願いしました。
会社の前に雄物川があって、白鳥が100羽ぐらいきます。春は桜がとてもきれいです。自然豊かでお米とか野菜とかが美味しいですし、いいとこなんですよ。こういういい環境で、ゆっくり商品を造れば、いいものができると思ってるんです。これから入られる方と、いい商品を一緒に育てていきたいと思っています
若手に聞く
入社6年目の佐藤和幸さんに同社に就職された経緯や入社して感じたことなどをお聞きしました。
佐藤さんは、湯沢市出身。地元が好きで就職は湯沢の会社と決めていました。高校の先生から秋田県醗酵工業を勧められ、親御さんが同社の商品を飲んでいて親しみがあったことから、この会社ならと思い就職を決めました。
地元に残りたいと思った理由は家が好きだったから。県外に出た同級生もけっこういましたが、やっぱり地元がいいと言って辞めて戻って来ている人が多いと自分の選択に間違いはなかったと確信を持っているようでした。
機械の操作をひとりでできるように
佐藤さんの担当は、お酒をパック詰めする作業。
農業高校だったので機械のことはあまり分からなかったんですが、やっているうちに分かるようになってきて1人でも機械を回せるようになってきて、やりがいを感じています
佐藤さんの部署には、少し歳の離れた先輩が多いのですが、皆さん優しく雰囲気がいいと語っていました。
同社の商品は多くの店に置かれているので、佐藤さんは、店で商品を見ると、思わず手に取って自分が詰めたものかどうか日付を確認してしまうそうです。
年間休暇122日 有給取得率80%
勤務時間についてお聞きしました。同社には冬時間と夏時間があり、12月から3月までの冬時間は夏時間より30分遅く午前8時半が始業です。なぜ冬の始業が遅いかというと、雪が降ると雪かきや通勤に時間が掛かるためだそうです。なるほど・・・。
年間休暇は122日とかなり多い方です。有給休暇の平均取得日数は15.4日で、有休の取得率は80%を超えています。一方、残業は月に平均3.3時間で、ほとんどありません。
佐藤さんの趣味はバスケットボール。小学生の頃から続けていて、高校のバスケ部OBの人たちのチームでプレーしています。毎週火曜と木曜に練習をしているのですが、コロナの感染拡大以降、残念ながら試合は行われていないそうです。
佐藤さんに就活生へのメッセージをお願いしました。
秋田県醗酵工業は湯沢ではよく知られた会社ですし、地元に貢献しているので、地元に残りたいとか貢献したいと思っている人に来てもらいたいと思います
取材・文:竹内 カンナ
◎秋田県醗酵工業のホームページ
秋田県醗酵工業株式会社
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